白執事

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「では、これからあなたの部屋へ案内します。



本来なら、メイリンと一緒の部屋なのですが
どうします?他人と一緒でも構いませんか?」






「……別でいいなら……別がいい。



人がいる中で、寝にくい……」






「そうですか。わかりました。こちらへ」






くるりと背を向けて、真っ直ぐに廊下を進んでいく




数分歩いていくと、ある扉の前でピタリと止まった




「ここがあなたの部屋です。
数個間に挟んで、あちらに私の部屋がございますので何かあればそちらに」





指だけさして、男は少女の部屋だと言う部屋の扉を開ける





開けたそこは、少女の今までの生活してきた部屋とかけ離れたものであった




使用人の部屋ながらも、しっかりとした家具やシーツ




大きな窓や質のいいカーテン





無機質でボードゲームしかなかった部屋とはかけ離れていた





「ほんとに……ここ、使っていいの……?」





「ええ。あなたの部屋ですから。」





ゆっくりと部屋に足を踏み入れて、しっかりと絨毯の感覚を感じる




屋内で過ごしてきた彼女の、病的な白さをした腕を伸ばして
指先で壁や家具に触れる






「……」





その様子を、黒い男が静かに見つめていると
不意に少女と視線が交わった






「……あなたの名前……あと、あの男の子も……聞いて、ない」






「……ああ。そうでしたね。




私はセバスチャン・ミカエリスです。坊ちゃんには後で直接伺いましょうか」





こくり、と頷いてボーッとセバスチャンの顔を見つめ続ける





「……まだ、なにか?」






「……なんでも……」






フイッと顔をそむけて、グルリと部屋を見渡した後
もう一度セバスチャンの方へ体ごと向き直る





「このあと……なにしたら、いい?」






「この後は一度、坊ちゃんの元へ行きましょう。



今度の詳しい動きも話さなくてはいけませんし、名前も聞かれるのでしょう?




それに、貴方に合った服もそろえなければなりませんしね」






顎に指先を当てて、考えるように話すセバスチャンに、少女はすぐに行こう、と声をかけて
廊下に出る





わかりました、と言葉を放つと
セバスチャンは静かに扉を閉めて、少女を連れて主人のいる部屋へと向かった
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