白執事

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馬車に揺られて、屋敷に着いたのは次の日の朝方




門をくぐり抜けて、少年と男が先頭に進むと
大きな玄関前の階段下には、4人の使用人らしき男女たちが立っていた






『お帰りなさいませ!坊ちゃん!』





コートとハットを脱ぎながら、軽く挨拶を返す少年




すると、使用人の中でも幼い顔立ちをした
短髪の少年が少女に気づく





「あれ?その子は誰ですか?」




その言葉に、近くに立っていた眼鏡をかけた女と、堀の深い顔立ちをした男が少女に視線を向けた




ちなみに、もう一人の老人の使用人は、床に座ってお茶を湯呑で啜っている





同時に3人の視線を集めた少女は、急なことで驚いて
黒い男の背中へと隠れる






「おや。隠れてしまっては彼らに自己紹介ができないでしょう?」






「さっきまでの威勢はどうした」





少女は気まずそうに視線を逸らして、言いにくそうに口を開く





「……怖がられるのは、嫌……。」





その言葉に、男と少年は顔を見合わせて
ため息を尽いた





「お前たち、紹介する。




こいつは今日から使用人として雇うことになった」





少年が仕方なしに、代わりに紹介すれば
幼い少年と成人の男女がキラキラと目を輝かせる




自分たちに後輩という存在ができるのが嬉しいのだろう





嬉しそうに話し出す3人をしり目に、黒い男がそっと横にずれて、少女の背中を軽く押した





「あっ……」





タタ、タン。という不安定な音と共に、数歩前に出た少女




4人の使用人の目が、少女に向けられる





「左からバルド、フィニアン、メイリン、タナカさんです」





黒い男が、手の先をそろえながら指さして紹介をすれば



口々に、よろしく、と挨拶をしていく





少女はもじもじと、施設にいるときの服である、病院服の裾を両手でギュッと力強く掴み
視線を下に下げる





何かを言おうと、開く口からは緊張からか、何も出てくることはなく
ハクハクと開閉するだけだった





使用人も、黒い男も、少年も急かすことなく静かに少女が話し出すのをじっと待つ





バクバクとうるさく動く心臓を落ち着けるように、ゆっくりと深呼吸をした少女は、
頬を伝う汗をそのままに、スッと静かに顔を上げる




震える唇で、震える声で、必死に言葉を繋いだ








「―――……はじめ、まして。




シロ、です……。よろ……しく……?」






たどたどしいながらも、弱弱しいながらも、芯を持った声はしっかりとその場にいる者の耳に届いていて
4人の使用人は、ふわりと優しげに微笑んで、明るい声で、こちらこそ、と声を合わせた








「僕は部屋に戻る。セバスチャン。命令だ。お前はこいつの世話をしてろ。



何かあったら呼ぶ。」






「イエス、マイロード」






スタスタと静かに部屋へ戻っていく少年を見届けて

黒い男はパンパンと手を叩く





「さて、私は彼女を部屋まで案内します。




バルドは昼食の準備を。



メイリンはシーツの洗濯を。



フィニは中庭の草むしりを。




タナカさんは……いつも通りで結構です」





タナカは呑気に床に座り、お茶をすすりながらほっほっほと穏やかに笑う




メイリン達は好奇心が収まらないという風に、少女をチラチラと視界に入れながら自分の持ち場へと向かって行った
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