白執事

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少女を先頭に、3人は薄暗い廊下を歩いてゆく






「これはどこに向かっているんだ?」





眉をひそめて、いぶかしげに問う少年に
少女は真っ直ぐと前を見つめたまま、首謀者のところだと伝える





「あなたたちが、ここにいるのは………何か、目的があるから……。



こんな人体実験所にくる、目的なんて……首謀者に用があるとか、そんなもの……」






図星なのか、少年は黙り込み
斜め後ろを歩いている男はクスクスとおかしそうに笑いを零した





「……人体実験を始めた根本的な、原因は……ただの興味だった、らしい……」







「らしい……?」






「そう首謀者本人に、聞いた………」






入り組んだ廊下の道を、スイスイと迷いなく進んでゆく







「人間が、限界を超えた能力を……もつのか……。




後のことは考えてなかった、みたい……。





でも、厳しすぎる人体実験に……子供は耐えきれなかった………。




もう、この人体実験所に…私以外の子供はいない……」








「……お前はいつからここに?」







「……2歳から」






その言葉に、少年は何度目かの驚きの表情を見せた






「お前、今歳は……!?」






「……15」






「13年間も……!?」







チラリ、と後ろを振り返り
少年と男を視界に入れて、すぐに視線を前に戻す







「私は……1歳で言葉を、発して……理解していた……。




それは、母親を恐怖させて……私は売り飛ばされた……」







少女の後ろで、ゴクリ、と生唾を飲み込む音が聞こえる







「……裏オークションに出品されて……ここの首謀者に買われた……。




ここにきて、すぐに実験が始まった……。
初めは、弱い毒……少しずつ強いものに変わって、薬や動物の血を注入された。



……次に、戦闘訓練が始まる……。
肉体戦、剣、ナイフ、飛び道具……暗殺技術も教えられた……。



傷だらけの体を、休める暇もなく……脳に大量の情報を流される……。




こんな日常……」






静かに、口を挟むことなく利き手に回っていた少年と男は
目の前の少女が立ち止まると同時に、歩みを止める



目の前には、大きな扉







「ここに……いる……」






「……ひとつ聞かせろ」






「……なに?」






「なぜ、僕たちが来ることが分かっていた」






背を向けていた体を動かして、少年を真っ直ぐに見つめる



暗い廊下の中で、赤い瞳が少年を貫いた






「計算した」







「計算……?」






コクリ、と少女が頷く






「首謀者たちが……子供を、攫い続けたら……
女王が、悲しむ……。



そしたら、女王の番犬が……動く……」







「ちょっと待て、お前は女王の番犬が僕だという事を知っていたのか?」






「知ってた……」






「なぜだ。人体実験のモルモット同然のおまえが、どうやってそんなことを知れる。


外のことなど分らないだろう」






少年を見つめていた赤い瞳が揺らいで、少し下を向く






「教えてもらった……大切な、人に……。



私を……ここから、出してくれる人だって…聞いた」







「それは誰だ」






「……」







赤い瞳は、少女が完全に瞼を閉じたことによって見えなくなる







「言わない……」






「なぜ」






「言いたくない……。




……ゲームに勝ったの、私……。あなたの、聞きたいこと、全部言うわけじゃ……ない…」








その言葉に、チッと舌打ちを打つ少年




少女はくるりと後ろに向き直り、扉のドアノブに手を乗せる






「……あなたの屋敷においてもらう……なら、いずれ……言うことになる、と思う……」





「……あまり待たせるな。僕は気が長い方じゃないんでな」






「ん……」







小さくうなずいて、少女は扉をゆっくりと開けた
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