狩物語

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明るい表情で、軽い足取りでその場に現れたのは
今から部活の試合に行くとでもいうような服を着た、美しい美貌を持つ女性だった。


容姿や服装が目立つはずが、注目を浴びることがないのは
彼女が気配を立っているからなのだろう。


彼女が絶をしているからであろう。



そんな彼女がある一軒の定食屋の前に佇むと、ぽつりと言葉をつぶやいた



「ここが、試験会場……。
私の、始まる場所だ」


スッと息を吸い込みゆっくりと吐くと、何かを決意した表情で
定食屋の戸に手をかけた









「たのもー!」



「おいおい!ここは道場じゃねえぞ姉ちゃん!」



明らかに場違いの発言を高らかに発した彼女に、近くに座っていた客が苦笑を漏らしながら突っ込みを入れた


「おや。それは失礼した!
それにしてもそこのお兄さん。なかなかのツッコミだな!
あの素早さは私も少々驚いた!」



「そ、そうかい?いやぁ、照れるなぁ」


誤魔化すように頭を掻く男に、彼女は人当たりの良い笑顔で問いかける

すると、男は見る見るうちに頬を赤らめ
最後にはまるで真っ赤なリンゴの様になってしまった


「それはそうと、店主はいるだろうか?」


「ああ、俺が店主だ。」


カウンターの向こうで料理をしている男が彼女を見ることなく
視線を手元に向けたままで答えた



「ああ、貴方が店主だったか。いやはや、失礼した。

奥の部屋はあいているだろうか?」


そう言うや否や、店主は視線を光らせやっと彼女を視界に入れる


「ご注文は?」


「そうだな……では、ステーキ定食を1つ」


「ほう……焼き方は?」


「弱火でじっくり。頼めるだろうか?」



笑顔でそう言い切ると、店主は微かに微笑みながら、手元へと視線を戻した


「あいよ。奥の部屋どうぞ!」


「助かるよ」



そう言って彼女は、奥の個室へと足を進めた
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