白執事

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首都、ロンドンから少し離れ
霧けぶる森を抜けると手入れの行き届いた屋敷が現れる







その屋敷に住まう名門貴族、ファントムハイヴ家当主の朝は
一杯の紅茶から始まる






少女は朝日が漏れるカーテンを開けて、セバスチャンは紅茶を入れ始める






「坊ちゃん。お目覚めの時間ですよ」





「おはよ……ござい、ます」





カーテンを開け終えた少女は、挨拶をして
クローゼットから主人が着る服を出していく




「本日の朝食はポーチドサーモンとミントサラダをご用意いたしました。




付け合せはトーストスコーンと、カンパーニュが焼けておりますが、どれになさいますか?」





「……スコーン」






ふぁ……、とあくびを零すシエル





紅茶を入れ終えたセバスチャンは、そんな眠そうなシエルを着替えさせていく





「この香り……今日はセイロンか」





「ええ、本日はロイヤル・ドルトンのものを」





「ティーセットは……ウェッジウッドの、蒼白……」





「そうか」






相変わらず、どこか眠そうで開ききっていない目で伝える少女を横目で見ると
満足そうに瞼を閉じて息をつくシエル





少女がこの屋敷に来て数か月





やはりというべきか、彼女の学習能力は恐ろしいほど高く
すぐに仕事を覚えては、メイリン達を驚かせて
今では彼らの尻拭いまで完璧に、否、それ以上まで仕事をこなしている





「今日の予定は?」





「本日は朝食後、帝王学の権威
ユーグ教授がお見えです」





「それで……午後からは―――」











場所は変わり玄関前の庭にて




ジュワ〜ン、という音が鳴り




シエルや少女、他の使用人が見つめる先には
セバスチャンとユーラシア大陸東部の民族衣装を身にまとった男が向かい合っていた





男は腕を動かし、声をあげる





「くらえ!!



奥義!!花鳥風月百花繚乱剣――――ッッ!!!」





ほあたああぁぁ、と男がセバスチャンに駆けていくも、男はセバスチャンに沈められる






「こ……この技は我が龍は秘伝の最終奥義……!!


猛虎龍咆万華散裂剣……
きさま一体何者だ!!!」







地に座り込みながら問うた男に、セバスチャンは手をパンパン、とはたきながら振り返った






「ファントムハイヴ家の執事たるもの、この程度の技がつかなくてどうします」






そう告げると、セバスチャンはくるりとシエルたちの方へ振り向き、爽やかな笑みを浮かべる





「……というわけで坊ちゃん。




私が勝ちましたので、お約束通りこれから晩餐まで
本日の復習と、明日の予習をなさってくださいね」




チッ、と舌打ちを打つシエルの後ろで
メイリン達3人はホーッ、と感心したようにキラキラと目を輝かせてセバスチャンを見つめている






かく言う少女は、眠そうに眼を半分開けながらボケー、とシエルの横に立っている
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