sleep

□不確かなものは闇を絶つ
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「はい。」


まだ湯気のたつ紅茶を、横に座る竜崎に差し出す。勿論大量の角砂糖も一緒に。
いつもなら、受け取って直ぐに角砂糖をぼとぼとと入れるのに、差し出されたそれに竜崎は一向に手を伸ばそうとしなかった。


不思議に思い振り向けば、こつん と黒い頭が肩にもたれ掛かってきた。


「…疲れました…。」


そのふわふわの黒髪を撫でれば、肩にすり寄ってくる竜崎はまるで猫みたいで思わず頬が緩んでしまう。



「寝ていいよ。…て、ちょっと。そっち向いてよ…」

「こっちの方が好きです」

「……」


言うが早いか膝に乗っかる黒い頭。目はばっちりとこちらに向けられている。

…嫌だなあ。下から見た顔ってすっごいブサイクなのに…

なんて膝に感じる重みに心の中で悪態を吐いてみる。
相当疲れていたのか、膝の上の竜崎は目を閉じたままピクリとも動かなくなってしまった。



…竜崎の顔、見るの久しぶりだな…。



竜崎は、今世間を騒がせているキラ事件の捜査で忙しく、ここ最近はあまり会うことが出来なかった。この様子ではきっと睡眠時間も削って捜査に挑んでいるのだろう。眼下に見えるその表情と、徐々に増す膝の重みがそれを物語っていた。

ゆっくりとその黒髪を撫でると、指先から伝わる温度に安心感を覚えると同時に、それを覆うように胸の中で黒い闇がじわじわと拡がり始める。



キラ…
それは史上最強最悪の殺人鬼。世の犯罪者と呼ばれる者を中心に、キラと関わる者は謎の死を遂げる。

つまり…そんなキラと真っ向から対立する竜崎の命は常に危険に晒されていると言っていいだろう。



知らず知らず、指先に力が入っており、力を抜くようにゆっくり息を吐き出した。



もしも最悪な事が起きたなら、私はこの先どう生きていけばいいのだろうか。
大切な人を奪われた私は目の前が真っ暗になり、魂が抜けた抜け殻のように毎日を過ごすのだろうか
きっと私は言葉に表せない程の絶望感に駆られるだろう。



一度拡がり始めた闇はなかなか薄れず、それどころか時間が経てば経つほどにはっきりと濃くなっていくばかりで。いつの間にか小さく光を灯していた安心感というものは、完全に闇に呑み込まれてしまっていた。






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