sleep

□ことのはじまり
1ページ/3ページ




砂ぼこりが舞う中、あちこちから地響きにも似た唸り声が聞こえる。最近魔法障壁の外でシガイが住民を襲う事件が多く報告されており、不死将軍という異名をもつコルを筆頭に、名無しさんを含む15人の隊員はシガイ討伐にやってきていた。
砂ぼこりが舞うその向こうには1人、シガイからの衝撃に吹き飛ばされ意識を失った隊員がいた。しかし、絶え間なく沸くシガイにこれ以上の攻撃は不利と考えたコルからは、撤収の合図が上がった。

「そんな!!まだ1人向こうに残っているんですよ?!」
「諦めろ、名無しさん。これ以上闘っても死者が増えるだけだ。」

確かに圧倒的にこちらが不利で、傷を負ってしまい戦闘不能の隊員もいる。このままでは全滅する危険性が高い。
しかし、今の体力ならまだ戦える、仲間を連れて帰ってこれる可能性がある。
基より正義感が強い名無しさんは、諦められずにいた。

「コル将軍…!お願いします!!」
「…命令だ。」
「将軍!!!私1人でもいいんです!!行かせてください…!!お願いします!!!」
「…名無しさん、お前は…。…15分だ。それでも駄目ならすぐ戻ってこい。」

一度言い出したら聞かない性分で、このままでは退却もできず更に被害が増えると判断したコルは、限られた時間なら…と名無しさんに15分の有余を与えたのだった。

「ありがとうございます!…必ず、生きて帰ります!!」

敬礼をし、勢いよくゲートの外へとかけていくその後ろ姿を、コルは厳しい表情で見送った。


「生きて帰る…当たり前だ…。」



ぽつりと呟いた独り言は鳴り響く呻き声に掻き消され、誰の耳にも届くことはなかった。



他の隊員たちとゲート内で待機しているが、名無しさんが退却命令を無視して出ていってから既に15分を超えていた。


「名無しさんさん…戻ってこねーなぁ…」
「あぁ…まさか…」
「ばか野郎!ンな訳ねぇだろ!そんな…名無しさんさんに限って…ッ、くそッ!」

隊員たちが戻らない名無しさんを心配する中、コルは黙ってゲートの外をみていた。

砂ぼこりが舞うなか、ゆっくりと近づく黒い影が見えた。

「名無しさんッ!!!」


怪我しているのか右足を引きずっており、その左肩にはしっかりと名無しさんが助けにいった隊員が支えられるようにいた。


「名無しさんさん!!」
「よかった…っ!!帰って来た!!」
「おい、怪我してるぞ!応援寄越せ!!!」

二人の足元にはポタポタと血液が滴っており、コルは急いで名無しさんのもとへと向かったが、名前を呼ぶや否や目の前で意識を手放しコルの腕の中へと倒れたこんだ。


「王都に戻るぞ!医師へ連絡をとってくれ!」



次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ