sleep
□不確かなものは闇を絶つ
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起こさないよう、そっと抱きついた竜崎からは微かに寝息が聞こえる。
この腕の中に感じる温もりが、小さいけれど確かに聞こえるこの寝息が教えてくれる。今 竜崎が生きているということを。
キラに関わっている以上竜崎の命が保障されることなんてない。信じたくないけれどこれが現実なんだ。
この幸せな時間をキラという殺人鬼に横から奪われてしまうかもしれない。いくらあたしが「嫌だ」と言ったって、これはどう仕様もないこと。否、もうあたしには成す術などなく、竜崎の背中を見ているとそんなこと簡単に言えるわけがなかった。
その背中に背負うモノの重さは、あたしなんかが語っていいものではなく、あたしなんかが簡単に否定して良いものではない。『L』として闘うあなたに。
「…名無しさん?」
「え…あ、ごめん。起こしちゃった?」
目の前には訝しげな表情をした竜崎がいた。そのまだ眠そうだった瞳は徐々に曇っていく。
「……何故泣いてるんですか?」
泣いてる…?あたしが?
頬に手をやると、触れた場所は確かに濡れていて
「…おっかしいなー、何でだろう…」
ごしごしと服の袖で涙を拭い、何でもないよ、と竜崎に笑顔を向けた。
お願い。
気付かないで。
この気持ちに。
覚悟を決めたあなたの足枷なんかになりたくなんかない。
なのに…
「…何で…竜崎がそんな顔してるのよ…」
…やめてよそんな顔。
竜崎がそんな顔する必要ないじゃない…。
そんな顔されたら…。
偽りの表情は容易く崩れ、頬に伝はあたしの心の弱さ。
駄目…せっかく拭いたのにまた…
「名無しさん、手をのけて下さい。」
「……無理」
「手をのけて下さい」
「…やだ」
「名無しさん」
「や、だ・・・」
抵抗も虚しく顔を隠すように覆っていた手を払われた。