短編(2BRO.)

□とある冬の日のお話
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そうしてもともと弟者が三人前と考えて買いそろえた材料達は四人で取り合う形でなくなってしまい、順番にお風呂に入るころには兄者とおついちが早々にお酒のプルタブを開けて、プチ宴会へと変わっていた。お風呂上りだという事もあり、各々タオルを首にかけた三人は最後に入浴した私がリビングに入ったことにも気づかず、ソファに深く腰掛けて大笑いしている。


「あぁ、ごめん。後片付け手伝うよ。」


それに混ざる前に、とシンクで洗い物をしていると頬をピンクに染めたおついちがやって来た。すでに開いた空の缶をゴミ袋に入れ、食器を片付けてくれる。そして洗い物をする私の体を背後から抱きしめた。飲酒しているからか、お風呂上がりだからかその体温は高くてついさっきお風呂から上がった私の背中はすぐに汗ばんでくる。


「もう酔ってるの?」

「まさかぁ。」


ふふ、と笑顔を漏らしたおついちはそう言ってはいるが少しほろ酔い状態なのだろう、私のお腹に腕を回したまま上体を左右に揺らした。子供がお母さんにするようなその行動に笑みを浮かべる。二人で少し笑いあうと、不意におついちが私の首筋に唇を寄せてすぅと息を吸った。


「んー、ボディソープの匂い。」

「おついちさんもいいシャンプーの匂いだよ。」

「レイちゃん、変態さんだ。」

「おついちさんこそ。」


顔を見合わせて再び笑いあうと、至近距離に見つめたおついちの目がゆらりと揺れる。ゆっくりと睫毛が下りた瞬間。



「おついちさーん!お皿ほしいー!」


リビングから弟者の声がして、私達は閉じ掛けた目を開いた。「あぁ、もう」とおついちは苦く笑うと私の首筋に再び顔をうずめ口づけを落とし、おなかに回した腕をするりと開放してから食器棚から小皿をもってリビングへ戻っていった。

少し惜しいことをしたかもしれないな、なんて笑みを浮かべながらとっくに泡を流した食器たちを水切りカゴにきれいに並べると濡れた手を拭いた。首筋を撫でるとそこにじんわりと熱が残っていて、少し恥ずかしくなった。


「ん。」


リビングに私も合流すると、三人で占領されたソファーの一番端に座っている兄者が缶チューハイを渡してくれる。立ったままそれを受け取り、一口飲むとマスカットの甘酸っぱい味とアルコールの少しの苦みが舌を痺れさせ、喉に滑って行った。アルコールにお腹がじんわりと熱くなる。

どうやら三人でゲームをしているらしく、ぎゃいぎゃいと騒ぐおついちと弟者のミニゲーム対決の隣の兄者は私の手を引くとコントローラーを私に持たせて、自分の膝の間を少し開けそこへと私を導いた。兄者の膝の間に挟まれた私の両膝がぎゅうぎゅうで片方の膝を兄者の膝に乗せると、「お?」と青い目で顔をのぞき込まれた。


「酒飲むと人間大胆になるもんだな。」

「だって狭いんだもん。コントローラーいらないの?」

「俺忙しいから。」


いつの間にか両膝とも兄者の腕に絡めとられ、お尻だけが兄者の膝の間に残されると更にグイっと両膝を引き寄せられて横抱きにされていた。よろめいた上体を兄者の胸に体重移動すると、まるでそうする事が分かっていたかのように流れるように額に唇を当てられた。


「あぁー!エロ親父!兄者許さん!」

「そうだそうだー!次兄者も勝負しようよ!」


目ざとくそれを見つけた隣の二人がそう言うと、兄者は鼻で笑って見せる。腰にまで手を回し、より一層私の体を引き寄せると「嫌」と子供のように、だが低い声で威嚇のように呟いた。


「俺の代わりはレイだから。お前等にレイを倒せるか?」


上機嫌にそう告げた兄者は、私の操作するキャラクターを見ながら耳元で的確な指示を出し、私はそれを忠実に守ってコントローラーをはじく。面白いくらいに勝ち続ける様子に掌で踊るってこういう事を言うんだろうな、と隣のおついちと弟者を見ると二人でずるいずるいと私の背中にしなだれかかってきた。ゲーム好きなのがひしひしと伝わってきて、兄者に私にやらせてと小声で伝えた。
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