夢小説

□お久しぶりです 戦の国 (アカセカ/信長メイン)
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《明日を向くひまわり》

風のない、白っぽい茜空が 天に広がる冬日。
向日葵が咲いた。

そう連絡を受けた信長は 巫女を伴って 物見遊山に出掛けた。

おかしなものだ。

夏は まだ 太陽が照りつけていたが、向日葵は咲かなかった。
なにかあるやも、との不穏な気持ちは 民の中にも、そして信長の中にも あった。
そのすぐあと、陽が 落ちた。


吉宗は 秀吉に接待させている。
あれは 素直だ、と信長は心内で評した。
俺の国では 役に立たない。少なくとも戦士の器ではない。
心優しく 丁寧で 洗練されてはいるが 信長は少し合わない。

信長は 専ら巫女に構った。
とはいえども 半兵衛預かりであるが。

「向日葵、分かるか?」
背に乗る 巫女は 駆ける風の中で うん と言った。

信長は 満足して 速度を早めた。


背の高い大きな花が束になって こちらを向いている。

確かに妙なものだ。

人だかりは 信長のために 波の引くように自然に道を開けた。
巫女はうしろで え、あ、すみません、とすっかり恐縮してしまって しろにいるときとは大違いである。

「見事に咲いたな、仁蔵」
この畑の持ち主に声をかけると こちらも 恐々としながら前へ進み出てきた。

「へ、へぇ...なんでぇこんなさみぃときに 咲いちまったんだか......うちだけじゃなくて みんなそうなんで......へへっ、これも 太陽さンまが おかくれあそばしたからですかねぃ? はは、んでも、なんでぇまた 上様の方を?こら!だめじゃねぃか...てんとさまのほうをみてシャキッとせい!!」

信長は話の最中に 馬を降り、巫女もおろした。
で、話が終わるかどうかのところで巫女に言った。

「女、ちょっと向こうへ回れ」

「え」
ほほを膨らませつつ、テトテトと走っていく 姿がまた面白い。


予想通り、向日葵は向きを変えた。
群衆からどよめきが上がる。

「フフン。あれは 太陽の巫女。ひまわりもわかっておるようだわ。」

自分を向いた向日葵に ビックリしたのか
巫女は ひまわりをにらみ ソロソロと こちらへ戻ってくる。

動きにあわせてむきをかえるヒマワリ。

「このヒマワリ、なんなんです。ついてくるんだけど...」

「おまえは巫女。 自信を持て。帰るぞ。」

「えっ」

帰り際、波のようにひいた群衆は 頭を地面に擦り付け なかには 泣いてるものもいて。

「...信長さん、いじめはよくないですよ。つよきは弱気を掬い 助けなくては。それが国主たるものの役目であって云々」

後で綿々と 説教を垂れてくるのさえ 心地よく 信長は 綱を愛馬に任せ 流れる声に 気持ちを馳せた。

「...聞いてます?」
「...」
「信長でべそ」
「だから、でべそとはなんだ。」
「あ、聞いてますね。 ...ぅ、うん。強きものというのは単に武力を持つものということではなく...云々」
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