夢小説

□「人生には驚きが必要である」(刀 鶴丸)
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『人生には驚きが必要である』




夏風が吹いている。
夏の北風は熱いらしい。


審神者は 縁側に座り 入道雲が浮かぶ夏空を見上げながら

自分はなんのために生きているのだろう とおもった。


刀剣男士を束ね 戦の指揮を取りつつ 戦績を政府に報告

新たな指令を受け取り、こなす。


其が審神者として 彼女に課せられた使命であったものの

なんとなく気がすすまないのだ。



歴史を変えようとするモノ を成敗する

ー政府の方針がいまいち理解できない。

別に変わったって大差ないだろう

ー此の地球上に一人きりでない限り 争いはいずれおこる。

争いは いつか終結し つかぬ間の平和が訪れ、

やがてまた 争う。

その繰り返しだ。


歴史を変えてしまうと たしかに、

自分はここに存在しないかもしれない。


だが、それがなんだという?

異形のものと 過去をめぐって争う位なら、

それも運命としたがってみたらどうだろうか。

争いがない世界。


過去ー少なくとも審神者がこの間まで生活していた時代では
争いを無くし平和に暮らすことが望まれていたはずだった。

其が何故、この未来では また争いが起きているのだ?

争いのために わざわざ神を呼びつけ顕現させ使役する

ーその考えに納得できない。


そもそも神とは 人間に拝まれ奉られ

信仰の対象として讃えられる

そんな 人にはてが届かない存在であったはずなのだ。


争いとは 醜いもの。

争いが起こる度に これはこうであるから、と

理由付けがなされるが

本当にそうであったかなど 誰もわかりはしない。

ただ、心の安定を保っていられる範囲から

はみ出てしまった

そのときに

たまたま条件が揃っていた

ーそれだけの話ではないか。

争いが起こるのは 心の閾値が狭いからー。

審神者は そう考えている。


神を駆り出してまで守りたいもの。

その価値を 自分が知らないだけだと理解しながらも

まるで理解する気が起こらない自分が滑稽であわれだ。


ただ、政府の役人たちが、

自分の居場所を守りたいがために

わざわざ 過去から呼び出されたのだとしたら

それこそ滑稽だと思わず口の端があがった。


歴史を変えさせないために 歴史を変えている。

敵をすべて掃討したら 審神者は記憶を消され

もといた場所に戻ると言うが、それまでに死んだら?


終わりのないぐちゃりとした粘着質な問いに

頭がおかしくなりそうな気配を感じる。

誰も答えてくれないだろうそれが粗方頭を巡り終わり

ため息ついたところで ふと 気配を感じた。


「後ろだぜ?」


人の身を得た付喪神が一人。

鶴丸国永が いつのまにやら 背後に居たようであった。

レンズ部分が文字の形になっているサングラスをかけ

どうだ、驚いただろう?

とニヤニヤ問い掛けてくる声は

悩みなどないと言った風に 明るく弾んでいる。


「よくお似合いですよ」

そう微笑みながら、

直前までの自問と 右手の中のものを懐にしまい

審神者は 伸びをする。

「おや、これは驚いた。」


「なにがです?」


「いや、君がそうして無防備な顔をしているのを

見たことがなかったものだからな」


本気で 驚いているようすに軽く笑うと

鶴丸もその端正な顔をくしゃりとゆがませた。


「あぁ、顰め面よりもそちらの方が似合うな」




夏の気紛れに涼しげな風が 軒下の風鈴の音を散らした。

今日の驚きを語る鶴丸に 耳を傾ける審神者。

その着物の懐で 鈍色が小さく光っていた。


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本文はここまでです






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設定適当、初刀剣。初60minチャレンジ。
最後急ぎ足感。そして行き当たりばったり感。
鶴丸ほぼ出てない。
ある夏の日。
なんか後味悪い。
もうちょっとカラッとした感じにしたかった。
だが、後悔はしていない。
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