夢小説

□はじめまして 天の国 (アカセカ)
2ページ/9ページ


桃色の花びらが舞う。
他国ではもう失われてしまった 豊かな自然に 思わず息が洩れた。


気を失った巫女二人を代わる代わる背負いながら
一行は ウサギの案内で天の国へとやって来ていた。


国主、オオクニヌシの助けもあって 巫女はなんとか意識を回復したものの、 気力は閉じたまま 鬱々とした雰囲気が うっとおしくまとわりついて いる。


そのまま ほっておくと その陰気は 式神のいい餌になるようで 見ていられなかった。


宿がない一行は 勧めに応じて その宅に泊まることにした。

吐き出すところを 得た感情は意識しなくとも 勝手に口から外へ出る。

オオクニヌシは 彼らが話すその因を 静かに耳にとめながら
影薄く 外へ出ていく 巫女を見ていた。








ニンゲン
ニンゲンだ
ニンゲン...

ワカイ、
ワカイな
ワカイ...

木々たちが私語く声が聴こえる。

茶を飲んでいたオロチは 静かに 気を引き締めた。
身なりのせいで 人間に 追いかけられること が多々あるからだ。
欲深い人間は 美しい鱗を纏うオロチを 異形として 災いのたねとして 殺意を向ける。

だが、その民も いつもは ここまで奥深く入ってくるようなことは無いのだが...。

「このところ ニンゲンどもが へんに ウルサイ 」

愚痴というよりは忠告にしか聞こえないそれを 言いに来た序でに タケルーオロチの大事な友人 に絡まれた ヤタガラスも あからさまに眉を顰ている。

「きょうは ぽかぽかで きもちいいね」

一人 タケルだけが ふわふわと マイナスイオンを発している。
こいつだけは守らなくては。
二人は目で頷きあった。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ