短編置き場

□やっぱ勝てない
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「君の体温。」の続き

理佐side




ねると付き合い始めてから数週間たった。
今日は、11月11日。ポッキーの日。
あの事件のおかげ…といっていいのかどうかは微妙だけど、クラスの皆は仲良くなって。
あちこちから「ポッキーゲームしよー!」という言葉が飛び交っている。
少し離れた先ではおだななが…



「あの…ゆいぽん?私とポッキーゲーム…」
「しない。」



あ、フラれた。
由依即答すぎでしょ。笑



「えぇっ!まだ最後まで言ってないのにフラれたっ!」
「はっはっは…っ!オダナナどんまい……ぷっ!」
「ちょっと愛佳笑いすぎ!」



愛佳はそんなおだななをみて爆笑している。
死体もないし、今日も平和だな。とさきほどまで読んでいた雑誌に目を落とすと、遮るように差し出されたポッキーの箱。



「理佐、あげる。」
『…ありがと。虹花。』



微笑んだ虹花からポッキーを受け取った。
すると、向かい合うように座っていたふーちゃんがニヤニヤしながら話し始めた。



「…てかさ理佐。ねるとはどうなの?」
『え?なにが』
「なにが…って、あんな告白しといてまさか進展なしとか?」
「え、どうなの理佐。気になる。」



おいおい。虹花まで。
虹花は私のこと思ってくれてたんじゃないのかとつっこみたくなったけど、そういえばこの前、他校の生徒といい感じなんだー。とかいう報告をうけたのを思い出した。
っていうかねると付き合ってること、まだ誰にも言ってなかった。
知られるのは恥ずかしいし、なによりまだ自分でもねると付き合ってるっていう実感がなくて、あの日から恋人らしいことをしたかと質問されれば、なにもいえないのは事実だった。



『いや…進展って』
「あー、でも理佐意外と奥手だからなんの進展もないとかありえるかも。」
「たしかに…恥ずかしがり屋だしね?」
「そうだ!ポッキーの日なんだし、このチャンスを使うしかないんじゃない?」
「あ、いいじゃんそれ!」
『え…ちょっと!』



あぁ、なんだか嫌な予感してたんだよな。
黙っていれば、虹花とふーちゃんはこそこそと計画を立て始めた。
そんな2人をどう止めようかと頭を悩ませていると、ふーちゃんの背後から可愛らしい声が降ってきた。



「なに話してるのー?」
『あ、ねる』
「ねるっ!タイミングいいねー」



顔を上げるとねると目が合った。
相変わらず、ふーちゃんと虹花はニヤニヤしているけど、ねるを目の前にした私には2人を気にとめる余裕なんてなかった。



「ねる、ポッキーゲームしない?」
「あ、いいよー。誰と?」



え、誰と?って。誰とでもできるの?
その言葉に一瞬嫉妬心が生まれ。
そんな私を見てねるがちょっと笑った気がした。



「理佐とやってみてよ!」
「はい。じゃあ、理佐ポッキーセットして。」
『え、ちょっ!まだやるっていってないから』
「もー、私おさえてるから虹花ポッキー咥えさせて。」
「はーい。」



私の抵抗もむなしく、簡単にふーちゃんにおさえられてしまって。
ポッキーも咥えさせられて、準備万端。
ねるが少し微笑みながら、近づいてくる。



「理佐、恥ずかしいの?」
『うっさい』
「ふふっ。それ咥えてても話せるんだね」



恥ずかしくて、ねるから目を逸らした。
ねるはそんな私を見てまた笑ってから、虹花とふーちゃんに問いかけた。



「ポッキーゲームってどういうルールなの?」
「んー、正確には知らないけど、先にポッキーをはなしたほうが負けかな」
「じゃあ、どっちもはなさなかったら?」
「そりゃ…、最終的にはキスだね」
「ふふっ。そっか」



ねると目が合った。
弄ばれてた頃を思い出す、意地悪な笑みを浮かべていた。
その瞳をみて、胸が高鳴る自分もどうかと思うけど。



「最終的にキスするんじゃ、これ最初からいらないね?理佐」
『ねる…?』



ねるの顔が近づいてきたと思うと、口からポッキーが取られ。
その直後、目を閉じたねるの顔がすぐそこにあった。
周りから、「小学生は見ちゃだめ!」とか、悲鳴に近い声が聞こえてきて、あ、今ねるにキスされてるんだと気づいた。
だんだん離れていくねるに、だんだん熱くなる顔。
皆になにか言い返したかったけど、唐突な出来事に頭が回らなくて。



「理佐は私のだからねー。ポッキーゲームしちゃだめだよ?」



というねるの言葉に、私はまた顔を赤くすることしか出来なかった。
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