短編置き場

□絡まる。
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ねるside






中学で人間関係が面倒くさくなって不登校気味になった私は、高校に入ってからもなかなかクラスになじめないでいた。




「長濱さん、具合どう?」




そんな私は保健室の常連客になった。




『わかっとるくせに、聞かんでよ。』

「やっぱり…またさぼりか。」




そういってカーテンの隙間から顔を覗かせて笑っているのは、渡邉理佐。
保健室の先生で、私が保健室に通う理由でもある。




『先生、こっちきてよ。』

「私、まだ仕事あるんだけど。」

『ちょっとだけでいいけん、きて?』




起き上がってベットの端をぽんぽんとすると、理佐は意外と素直に腰を下ろした。
そのまま後ろから抱きしめると、保健室に良く似合うさわやかな匂いがした。




「長濱さん…、やめて。」




理佐は身体を離そうとした反動を使って、ぐいっと引き寄せた。



『なに?聞こえんかった。』




そう耳元で囁けば、理佐は体が微かに震わせて、小さく息をもらした。




「…ねる、離して。」

『先生、ほんと耳弱すぎ。』

「っ…、やだ…っ。」




髪の隙間から覗いている耳をすーっとなでた瞬間、理佐の体から力が抜けた。
その隙にそのまま体制を逆転して、理佐をベッドに押し倒した。
お互いの呼吸が感じられるくらい顔を近づけると理佐に少しにらまれたけど、




『そんな目うるうるさせて睨んでも意味ないよ先生。』

「…誰か来たらどうするの?」

『ふふっ…、誰か来なかったらしてもいいんだ?』

「…っ!別にそういう意味じゃなくて…。」




隙を突かれて目を泳がせている理佐の唇に軽く触れる。
何度か軽いキスを繰り返すと、諦めたのか、理佐のほうからも唇を合わせてきた。




『ふふっ…、先生、キス好き?』

「別に、好きじゃない…っん…」

『ん…。あっそ。素直じゃないねえ。先生は。』




もう1回唇を合わせて、ドアの鍵と開けっ放しのカーテンを閉めるために一度ベッドから降りると、制服の裾を掴まれた。




『先生?』

「私は…、ねるが好き。」

『ふふっ、知ってる。鍵閉めてくるけん、ちょっと待ってて。』




そういうと、みるみるうちに赤く染まる顔。
私がこのまま出て行くと勘違いしたのか、安心と照れが混ざった複雑な表情をして少し頷いた。

鍵とカーテンを閉めて、理佐の上に跨ると理佐の腕が首に回った。




『今からすること、いけないことだよ?分かっとる?』

「今更そんなこと聞かないで。…ねるこそ、わかってるならしないでよ。」




少しいじめると、拗ねた顔をして目を逸らされた。




『ふふっ、わかってないからやめなーい。…ねぇ先生、こっち向いて?』

「ねる…それやだ。」




素直に目を合わせた理佐は小さくそう呟いた。




『ん?なに?』

「だから…、2人なんだから先生じゃやだ。」




首に回された腕に引き寄せられて、顔が目の前まで近づいた。




「理佐がいい。」




潤んだ瞳で見つめられてその台詞を言われたら、




『理佐、それずるいよ。とまんなくなる。』

「ねる…っ、んっ…!」




我慢できず、いきなり深いキスをすると、理佐も負けじと絡めてきた。



先生と生徒じゃなくなる瞬間。

誰とも分かり合えなくても。

あなたさえいればいいと思ってしまう。



好きだよ。理佐。

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