短編置き場

□君の体温。
1ページ/2ページ

理佐side




彼女は、いつもなにかをたくらんでいるようだった。
一つ一つの言動が、計算づくされているように見えた。




「理佐…、こっちきて。」




そういって手招きする仕草でさえも。



私は、彼女の隣の席に腰を下ろした。



放課後の教室に、2人きり。
窓から差し込む夕日が、私達の影を長く伸ばした。




「理佐、私に好きって言ってくれたじゃん。」




そう、あれはあの事件の真っ最中。
いろいろあって、私は彼女に思いを伝えることが出来た。
それはかなり唐突な出来事だったから、一方的だったけれど。
今は、事件も一件落着して、どうにか落ち着いた日々を過ごしている。




「私、正直、その後から理佐を弄んでた。」

『…そうなんだ。』




あぁ、やっぱり。
私が告白してから、スキンシップとか一緒に行動することとかが増えて。
彼女が私を好きなはずはない。と思いながらも、どこか期待してしまう自分がいた。




「それをさ…、謝ろうと思って。」

『うん。大丈夫だよ私は。』




分かっていても、辛いものは辛い。
私は、帰る準備を始めようと席を立った。




「待って!まだ最後まで話してない。」

『え?』




彼女が少しずつ私に近づいてくる。

…やだ、こないで。
今、私のこと振ったじゃん。

思わず後ずさりしようとしても、すぐ壁にぶつかってしまう。




『…なに?』

「私、理佐のこと好きになっちゃった。」

『え…?』




至近距離で見つめてくる彼女の、いつの日かの私と同じような告白に、一瞬思考が停止した。




「理佐はまだ、私のこと…好き?」




彼女は照れというものをしらないのか、いつもと変わらない表情で聞いてくる。
いつもの…全てを見透かしているような瞳で。


心臓がどくどくと動いているのがわかる。


まだ…って、そんなこと決まってるのに。
もう分かってるんでしょ?私がなんて答えるか。


私はなんだか悔しくて、思い切って彼女の唇を塞いだ。


ゆっくり離れて、まっすぐに彼女の目を見る。




『決まってるじゃん。私はねるが好き。きっとねるに振り向いてもらえなくても、ずっと好きだったよ。』

「…理佐っ。」




ねるはそのまま抱きついてきた。
私の体が、ねるの体温に包まれる。


周りから見たら、また弄ばれてるって思われるかな。



でも、私はちゃんと知っている。



私がキスした時。
ねるが顔を赤らめていていたのを。



そして今感じるねるの鼓動が、
私と同じ速さで動いているのを。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ