1st(第1〜5部)

□第一部(4〜6章)
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第一部『第四章』





「あ・・・月!!」


スッと現れた月を見て、横のケント様を見た。
月を見上げているケント様は少しずつ大きくなっていった。
髪の毛も少し伸びて服も茶色のマントから黒のマントになった。
子供のケント様の目は大きめで丸い目だったけれど、スッと細くなった。
背丈も私が頭二つ分見上げるくらいになった。
夜になって18歳のケント様に戻った。
大きくなったケント様は毎晩見ているのにやっぱりかっこよくて、その姿は本当に人間界にいていいものなのか私には分からないくらい眩しく、ため息をついてしまった。
きっと私の記憶が無くなる前でもケント様ほどカッコイイ人は見た事無いんだろうな。


「ところでケント様、野宿とは言っても食べ物も無いし・・・。
何も無いですよ、ここは。」


私はただ広い、この何も無い空間を見渡した。
ケント様も頷いた。


「ん、そうだな。
この少し先に川があるんだ。
その近くにはいろいろな実が生っているからそこまで行くしかないな。
ミクア、大丈夫か??」

「勿論です。ケント様♪」


ケント様に自分の事を心配してもらえたのが嬉しくて私はニッコリした。
ケント様は私の手をそっと握って歩き出した。
私はすっかりほっぺを赤くしてケント様に寄り添う様にして歩き出した。





「ケント様・・・??」

「ん??」

「私を助けてくれる前は、一人で旅をしていたんですか??」


私はケント様の顔を見上げた。
ケント様はまっすぐ前を見ながらしばらく黙っていたけれど、立ち止まって言った。


「一人じゃない。」

「誰がいたんですか??」

「・・・。」


ケント様は私を見て首を横に振った。
私はケント様が時々考え事をしながら、ぼうっとしている訳が少しだけ分かった様な気がして、しばらくケント様の顔を見る事が出来なかった。
私は少し俯いて靴で下の草を撫でながらケント様が以前、一緒に暮らしていた人の事を考えた。
その人は男の人・・・??それとも・・・女の人・・・??
ケント様とその人は血が繋がっているのかな・・・。
もしも・・・もしもその人が女の人だったとしたら・・・だったとしたら、その人と私・・・どっちが良いのかな・・・。


「行こう。」


上からケント様の声がして私は顔を上げた。


「はい、ケント様。」


ケント様はまた私の手を握った。
今後はさっきよりもきつく握られた様に感じた。
私達二人は薄暗い道をまた歩き出した。
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