1st(第1〜5部)

□第一部(プロローグ+1〜3章)
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第一部『プロローグ』



薄暗い地下室で私は寝ていた。
目は開いていたけれども体中がしびれていてまばたきすらもできなかった。
どうして私はこんな所で寝ているんだろう・・・。
なぜ体中がしびれているんだろう・・・??
そうだ。
ずっとずっと前に誰かにさらわれて・・・。
違う 最近だったかな??
ずっとこの状態でいたから、私はいつからこんな事になってしまったのか分からない。
私をさらったのは誰なの・・・。
あの時はすぐに薬を飲まされて寝ちゃったから顔が見えなかった。
いや・・・見えたのかもしれない。
忘れてしまっただけなのかも・・・。


目が覚めてからはこの状態だった。
体中がしびれていて・・・少しずつ何かがぬけていっている感じがする・・・。
一体何がぬけていっているんだろう・・・??
そういえば私はさらわれる前、誰かと一緒にいた気がする。
とても大切な人だったのに・・・。
名前も顔も忘れちゃった。
そう・・・。
私からなくなっているものは『記憶』だ。
私から少しずつぬけていっているものは『記憶』なんだ・・・。


突然【バタン】とドアを開ける音が聞こえ、すぐ近くで誰かの名前を叫ぶ声が聞こえた。
そう・・・つらそうに叫ぶ男の人の声・・・。
一体誰の名前なんだろう・・・??
あの声は誰なの・・・??
もしかして・・・あの名前は・・・・・私!?





ふと、目が覚めた。
頭が痛い・・・。またあの夢だ。
私はここのところ毎晩あの夢を見る。
いつもつらそうな男の人の叫び声を聞いて目が覚める。
一体何なの・・・あの夢・・・。
私はズキズキと痛む頭をおさえて辺りを見回した。
良かった・・・。ケント様だ。
私はすぐ隣ですやすや寝ている大好きなケント様を見て安心して目を閉じた。


いつもそうなんだ・・・。
目が覚めてしまうと男の人の声も、その人が呼んでいた名前も覚えていない・・・。
あの夢・・・。
何か・・・引っかかる気がしてならない。ただの悪夢じゃない気がして。
とても不安なんだ・・・。


大丈夫。
私にはケント様がいる・・・。
どんな事があってもケント様は私を守ってくれる。
そう・・・私にはケント様が・・・。


いつの間にか、私はまた眠りについていた。
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