1st(第6〜7部)

□第六部(72〜73章)
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第六部『第七十二章』





ルーストは『メイド室』と書かれたプレートが下がっているドアの前に立った。


「リリカさん、今から此処を抜け出しましょう。」

「どういう・・・事・・・??」


中からリリカの弱々しい声がした。
ケントはルーストの後ろで耳を疑った。
いつものリリカとの違い様に驚いたのだ。
ルーストはドアを開けた。


「勝手に入ってすみません。時間がない。」

「やだ・・・・・・、ケントも・・・いたの・・・??」


ルーストとケントが部屋の中へ入ると、奥の方に置いてあるベッドで、うつ伏せで苦しそうに息をしているリリカの姿があった。
魔力が強いため、『服従魔法』にかからないので、逆に苦しいのだ。
ケントはリリカが寝ているベッドに近付いた。


「・・・リリカさん、魔法の原因は指輪なんです。
指輪・・・はめられてるでしょう。」

「リリカ・・・さん・・・ねぇ・・・。」


リリカが呟いた。
ケントは目を細めた。
リリカはケントに片手を差し出した。


「そう呼ばれるの・・・初めて・・・かも・・・。
いつも・・・『あなた』・・・だった・・・から・・・。」


一体何が言いたいのだろうか。
ケントがそう考えた瞬間、後ろにいたルーストがケントの隣にやって来た。


「分からないのかい、君は。
リリカさんは、君が他人行儀にいつも自分の事を呼んでいるのが嫌だったんだよ。
・・・君だって、ミクアに他人行儀にされたら嫌だろう。
もっとも・・・オレは、ダンスパーティーとかで、小さい時の自分に変身してミクアに迫るのは面白かったけどね。
年の近い、『お似合いカップル』みたいだと思わないかい??」
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