1st(第6〜7部)
□第六部(60〜61章)
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第六部『第六十章』
ケントは横目で隣でひょうを抱いてスキップしているミクアを見た。
ミクアはしきりにさっきからひょうに話しかけていて、ひょうもそれなりに反応していた。
「ミクア、前を見ないと。」
「うん♪♪」
ケントの注意にミクアは大きく頷いた。
しかし、頷いたもののミクアのスキップは止まる気配は無く、ケントはため息をついた。
「ケント、新しい町に着いたわ。」
リリカがケントを振り返った。
ケントは頷くと足を速めてリリカの隣へ出た。
「・・・向こうの空が・・・。」
「あら。」
リリカは目を細めた。
ケントが見つめている遠くの空は薄暗かった。
此処は快晴だというのに。
「何てことかしら・・・日食が広がってるのねぇ・・・。」
「この国の中心部の方向ですね。
まぁ、あいつが『東の国』にいるから当然ですけど。」
ケントが言ったそのとたん、後ろで困った様な声が上がった。
「動物さんっ・・・!!私を置いて行かないでぇ!!」
ケントが振り返ると、ひょうが猛スピードで此処までやって来た。
ミクアはパタパタと一生懸命走ってこっちへ向かって来る。
ひょうはじっと向こうの空・・・日食が始まってしまった空・・・を真っ赤な瞳で見つめていた。
「やっと追いついたにょ!!お兄ちゃ・・・!!」
走って来たミクアがケントの方へ手を伸ばしかけて小石に躓いた。
バタンと派手な音を立ててミクアはうつ伏せに倒れこんだ。
慌ててケントがミクアへ手を伸ばしたが、ふと異変を感じ取って手を止めた。
ドクン・・・。
ミクアの体がピクリと痙攣したかと思うと、どんどん大きくなって行った。
ひょうが空を見上げるのを止め、ミクアへ近付いた。
―『ミクアの視点からではない世界(終了)』―