部誌参加小説
□正義と信頼
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5章、背理の正義
この国にも警察と言うのがあって、英雄ばかりに頼っているわけではないのだ。
『悪の組織と警察組織が前面衝突!!』
という文字が全国の新聞に躍っていた。英雄の彼はこれを避けるために、その組織と交易のあった小規模な組織のみを狙い、外側から地道に潰していこうとしていた。前面衝突となれば、どれだけの血が流れるか数えたくもない。
しかし、今にも衝突しようとしていた二つの組織は、彼という邪魔と枷がなくなった事で、一気に衝突した。
国中ギスギスした雰囲気に包み込まれ、両者共に戦争の準備をし始め、人々を不安のどん底へと落とし入れた。
だから、ギルティはこう提案した。誰も傷付いてほしくないから。
両者共に損害は出したくないという思いがあったのだろう。この提案はすんなりと受け止められた。
警察としては、英雄を襲った相手を捕まえれればいいのだろう。
そう、提案とはギルティが警察に投降する事。
「ふふっ・・・。」
街外れの荒野。警察隊に1人向かって歩くギルティ。警察隊のあまりの厳重さに小さく笑ってしまった。たった一人の少女に警察隊は百人以上。その全てがギルティに拳銃を向け、盾を持っていた。
これでは、ギルティを捕まえると言うより、殺すための装備と言って良いぐらいだ。
それも当たり前か。捕まえて刑務所に入れたとしても、ギルティなら脱獄できてしまうだろう。それならば、この場で殺した方が手っ取り早いという事だ。
ある程度まで近づくと、ギルティの鋭敏な耳にガチャッという拳銃の安全装置を解除する音が聞こえた。
さらに近づくと、ギルティの正面にいる男が引き金にある指に力を込め始めた。
(・・・これで逃げれる。命の重さから逃げられる。)
今ここで全てに謝ろう。自分が殺した命達、結局助ける事ができなかった愛しの彼、そして、英雄に。
さらに一歩近付いた。
ドンッ
銃声が荒野に鳴り響いた。
二箇所で。