止められた時計

□6章、迷子再び
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「あ、リンお姉さんだ。」

「ホントだ、リンお姉さんだ。」


ディーとダムが真面目に門番をしていると、リンが歩いてきた。
緑のエプロンドレスを着て、ふわりふわりとした足取りでこちらへと向かってくる。


「こんにちは、ディー君にダム君。」


ニコニコと笑い、挨拶をするリン。


「どうしたの?怪我はもういいの?」

「出歩いていいの?」


ディーとダムが一斉に質問をする。
3時間帯前までリンはベッドから起き上がる事を許可されなかったのだ。
前の前の時間帯でようやく屋敷内なら出歩いていいという許可が下りた。
それなのにもう庭へ出歩いているリンを見て、心配にならないのはおかしい事だ。
ブラッドやエリオットなら、ちょっと怪我したぐらいならすぐに完治するだろうが、リンは余所者だ。
アリスを見ていたディーとダムにとって、余所者とはか弱い存在なのだ。
それにリンは苦笑して頷いた。


「うん、お医者さんが庭までいいよって言ってくれたんだ。」


リンの言葉にディーとダムは軽く驚きながらも、笑顔を浮かべた。
回復力が余所者にしてはすごいと思うが、こちらでは当たり前の事だ。
リンがこの世界に馴染んだという事なのだろう。
そう結論付けて、ディーとダムは、そっか、と頷いた。


「じゃあ、お散歩?」

「ここ、広いから迷わないようにね。」

「うん、ごめんね。」


ディーとダムの言葉にリンは笑顔で謝った。
その言葉に嫌な予感がして、2人は互いに目配せをする。


「迷っちゃったから、道を聞きたいんだ。」


思わず沈黙するディーとダム。
エリオットが前の前の時間帯で思った事を双子も思う。
爽やかな人には方向音痴が多いのだろうかと。


「・・・リンお姉さん。今度から散歩する時は案内をつけた方が良いよ。」


ディーは呆れた顔で提案する。
よく帽子屋敷に迷い込もうとする迷子を思い出しての事だ。
あの迷子は自分が方向音痴だと自覚しているくせに案内をつけようとしないで、迷いまくる。


「うん、案内してもらってたんだけど・・・。」


その提案に、リンは頷きながらも言った。
語尾が頼りなく小さくなっていきながら。


「はぐれたんだね。」


ダムの言葉が図星だったのか、あはは、とリンは乾いた笑いをした。


「う〜ん、何で道を間違えちゃうのかな?こっちで合ってると思ったんだけどな〜。」


むぅ〜、と考え込むリンに、ディーとダムはため息をつく事しかできなかった。
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