止められた時計

□2章、目覚め
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2章、目覚め



「へぇー、この子が余所者?」

「ふ〜ん、この子が余所者かー。」


ディーとダムがベッドに横たわっている余所者を覗き込む。


「ああ、そうだぜ。」


エリオットはそう断言した。
断言するのも当たり前だ。
ブラッドがそう言っていたのだから。


「ねぇ、この子の名前はなんていうの?」


ダムが首を傾げて尋ねる。


「知らね。」

「はぁ!?知らないはずないだろ?知りもしないのに助けたのかい?」


ディーが信じられないというような声を上げる。


「仕方がねぇだろ!治療した後も気が戻らねぇんだからよぉ!」


ディーの言葉にムッと来て、エリオットはそう怒鳴り返した。


「静かにしたまえ。怪我人の前だぞ。」


ブラッドに注意されて、慌ててエリオットと双子は口を噤む。


「名前など、目が覚めてからいくらでも聞けばいいだろ。くだらない事で言い合うんじゃない。」


ブラッドはだるそうな感じでため息をついた。


「そうだよね、ボス。」

「目が覚めてからいくらでも聞けるよね。」


双子が調子の良い事を言って、エリオットに全てをなすり付けようとしてくる。
まぁ、怒鳴ってしまったのは自分なので、エリオットは何も言わなかった。


「それにしても、珍しいよね。」

「うん、余所者が短期間に来るなんてさ。」


双子が不思議そうに言って、再び余所者の顔を覗き込んだ。


「そうだな。・・・この世界とあちらの世界の境界が曖昧になってきているのか?」


ブラッドにもよく分からないようで、そう言う口調には自信がないように思えた。


「そうだよなぁ。アリスが来て、300時間帯ぐらいしか過ぎてないんじゃねぇか?」


エリオットの言葉に双子達がコクコクと頷く。


「ふむ・・・なんだか、面白そうだが、面倒な事が起こりそうだな。」


ブラッドはけだるげに言うと、部屋の扉へと向かった。


「私は仕事に戻る。ディーとダム。君達も仕事に戻りたまえ。もちろん、エリオットも。」


そして、ブラッドは部屋の外へと行ってしまった。


「ボスに言われちゃったんだから、仕事に戻ろうか、兄弟。」

「そうだね、面倒だけど戻ろうか、兄弟。」


双子もスタスタと部屋を出て行く。
皆、目が覚めない余所者には興味がないようだ。


「まぁ、俺もあんまり興味ねぇけどな。」


そう口に出して、エリオットは一度伸びをする。
自分の名を口にした余所者の女。


「早く、目を覚ましやがれ。」
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