止められた時計

□6章、迷子再び
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「こっちだよ、リンお姉さん。」


ディーが先頭を行く。


「こっち、こっち。」


次がダム。


「待ってよ〜。」


その次にリン。
ディーとダムは広い庭をお屋敷までリンを道案内しているのだ。
まだ本調子ではないリンの為に、3人の歩く速さはとてもゆっくりだ。


「リンお姉さんは、お姉さんだね。」


ダムが突然、そんな事を言い出した。


「?どういう事?」


当然、リンは意味が分からず首を傾げる。


「お姉さん・・・アリスお姉さんはお姉さん以上だけど、リンお姉さんはお姉さんだよね。」


ダムは分からなくてもいい、と難解な言葉を重ねた。
アリスにはお姉さん以上になってほしい。
時々しか遊びに来てくれないが、それでも双子にとってアリスは愛すべき存在。
リンはお姉さんとしてしか求められない。
ここに滞在していて、ずっと一緒に居てくれるが、双子にとってリンは姉弟だ。
それ以上でも、それ以下でもない。
優しくて、いつも微笑んでくれて・・・。
理想のお姉さんだ。


「ねぇ、リンお姉さん。」


話は終わり、とディーがリンに笑いかける。


「ずっと僕達のお姉さんでいてね。」

「うん、もちろんだよ。」


リンはニッコリと微笑んだ。
理想のお姉さんだからこそ、お姉さんにしかなれない。


「ねぇ、リンお姉さん、遊んでよ。」

「ねぇ!遊んで遊んで!」

「お仕事は?」

「休憩時間さ!」

「休憩時間だよ。」

「仕方がないな〜。」





リンお姉さんは好き。
アリスお姉さんは愛してる。

この違いはとっても大きいんだ。
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