止められた時計
□3章、玩具
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「で、何でブラッドは紅茶なんか持ってるんだよ。」
よっぽど慌ててしまったのが恥ずかしかったのか、エリオットが拗ねたように言ってきた。
「なんかとは何だね?なんかとは。紅茶を馬鹿にするのはよしたまえ。」
少しムカついたので、エリオットを杖で小突く。
「いてっ。」
そうたいして痛くもないくせに、エリオットはそう声を上げた。
「私は今、3時のお茶が飲みたいんだ。これは何事であっても何人であっても、侵す事はできない。」
そう言って、ブラッドは再び紅茶を一口飲む。
「ホント、ブラッドって、紅茶が好きだよな〜。」
エリオットが呆れた声を出すのでもう1回杖で小突いておく。
「あははっ、なんか貴方達を見てると、自分が記憶喪失なのどうでもよくなっちゃいますね。」
余所者が楽しげに笑った。
「いや、よくないだろ。」
思わずといった感じでエリオットがつっこむ。
「そうですか?お医者さんも時間が経てば戻るって言ってましたし・・・。」
ニコニコと笑う彼女。
「はぁ、君は何と言うか・・・爽やかだな。」
思わずげんなりとした声が出てしまった。
ブラッドは太陽の下が似合いそうな笑みから目を逸らす。
「な〜んか、あのよく迷子になるあいつを思い出すよなぁ。」
エリオットもげんなりとした様子で彼女を見ていた。
「迷子?」
それに彼女は不思議そうに首を傾げる。
「なんとなく、似てるよな。」
「あぁ、そうだな。」
エリオットの言葉に同意するブラッド。
厄介なものを拾ってしまったのかもしれない。
ブラッドは思わずため息をついた。