止められた時計

□2章、目覚め
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「・・・エリオット?」


しかし、彼女は誰だろう、というように首を傾げているばかりだ。


「おい、あんたなぁ!気絶する前に俺の名前を呼んだだろうが!何で覚えてねぇんだよ!」


エリオットは思わず怒鳴ってしまう。
この10時間帯ぐらい、ずっとエリオットは悩んでいたのだ。
もしかしたら、彼女の好きな人と自分は同じ顔で同じ名前なのかもしれない。
彼女が目覚めた時、自分はどうすればいいのだろうか。
その事をずっと悩んでいたのだ。
しかし、いざ目覚めたらこれだ。


「気絶・・・?私、気絶してたの?」

「はぁ?」


彼女の問い掛けにエリオットは訳が分からないと顔を顰める。


「気絶してたんだよ!大怪我をしてな!」


もうエリオットは怪我人だからと気を使っていられなくなっていた。
苛立たしげに怒鳴り散らす。


「・・・怪我?何で?」

「それを聞きたいのはこっちなんだよ!」


エリオットの手が思わず拳銃に伸びる。
殺してやりたくなってきた。


「・・・あれ?記憶がない?」


茫然とした口調で彼女は言う。


「ない?・・・・・・・むしろ、私って誰?」


その言葉でようやくエリオットはおかしいさに気付いた。


「あれ?えーと、もしかしてこれは・・・。」


彼女が愕然と、顔を引き攣らせて、なぜか助けを求めるような顔でエリオットを見てきた。
助けてほしいのはこっちだ。


「記憶喪失・・・ってやつか?」


エリオットがそう言えば、彼女は泣きそうな顔で頷いた。


「・・・ブラッドー!!!」


バンッと勢い良く扉を開けて、エリオットはそう叫んだ。
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