止められた時計

□2章、目覚め
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何時間帯過ぎただろうか。
たぶん10時間帯くらいだと思う。
余所者はまだ目を覚まさない。
5時間帯ぐらい前までは、双子もいつ目が覚めるかとワクワクして頻繁にここに来ていたが、飽きてしまったようだ。
訪れるのはエリオット1人となってしまった。
ブラッドは元から動かないモノには興味がない。


「ん・・・。」


びくりっと肩を震わせてしまった。
考え事をしていたとしても、一緒にいる相手が気を失っているとしても、油断し過ぎだ。
これではマフィアのナンバー2なんて失格だ。


「・・・・・・。」


いや、そんな事を考えている場合ではない。
彼女が、目を覚ましたのだ。
開かれる瞼。
なぜか緊張で身体が動かない。
椅子に座ったままエリオットは身動きができなくなってしまっていた。


「・・・・・・。」


余所者は何も言わない。
今の自分の状況を考えているのだろうか?
不思議そうに天井を見ている。


「・・・どこ、だろう?」


小さな小さな呟きが彼女の口から洩れた。
静かな部屋の中だ。
その小さな呟きは自然とエリオットの耳に入った。


「ここは・・・帽子屋敷だぜ。」


そうエリオットが言えば、驚いたように不思議そうな彼女の顔がこちらを向いた。
初めてエリオットに気がついたという感じだ。
目が覚めたばかりなのだから、仕方がないだろう。


「・・・あなたは、誰?」

「へ?」


彼女の問い掛けにエリオットは唖然としてしまった。
誰、と尋ねたのか?彼女は


「誰って・・・。」


エリオットはおおいに戸惑ってしまう。
彼女は確かに、自分の事を見て、『エリオット』と呼んだはずだ。
なのに、今、彼女は誰?と尋ねた。
目覚めたばかりで、記憶が混乱しているのだろうか。


「エリオット、エリオット=マーチだが・・・。」


名乗ってみる事にした。
そうすれば、彼女も記憶の混乱から回復できるだろう。
なんせ、彼女は『エリオット』と嬉しそうに呼んだのだ。
大切な人の名前なのだろう。
聞けば思い出すはずだ。
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