止められた時計
□9章 銃の練習
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「まずこのグリップを握って・・・。」
「うん・・・。」
「待て待て、引き金にはまだ手をかけるな!暴発しちまうだろうが。」
「はわわ!あ、そうだ。撃つ意思がない時は、人差し指は立てておくんだよね。」
「お、よく知ってんじゃねぇか。」
エリオットとリンが庭で銃の練習をしていた。
この前のお茶会から時間帯は2回ほど変わり、リンは無事、医者に傷の完治を言い渡された。
それを聞いた2人は早速、約束の銃の練習をしているというわけだ。
時間帯は昼。
眠い事この上ないが、あの2人という組み合わせが少々心配で、昼のティータイムがてら、ブラッドは様子を見守っていた。
しかし、リンはなかなか筋が良いようで、心配は杞憂に終わったようである。
「よし。じゃあ、あの使用人に向かって撃ってみろ。」
「へ?」
エリオットが何の疑問も持たずに言った言葉に、リンが虚を突かれた顔をした。
「エリオット・・・。」
ブラッドは呆れ、思わず口を挟んでいた。
「お嬢さんは初心者だぞ。いきなり動いている的を狙うなど早すぎる。」
「あ、そうか。リンは余所者だもんな。」
エリオットは納得したようで、早速その的にしようとしていた使用人に言いつけ、動かない的を用意させた。
それをリンはぼんやりと眺めていた。
よくアリスが見せていた、信じられない現実を見せられたというような顔をしながら。
「・・・仲間を撃っていいの?」
不意にリンがブラッドに尋ねてきた。
「君に撃てる訳がないだろう。役なしのカードとは言え、私の部下だ。初心者に撃たれるほど馬鹿じゃない。」
「あ、うん、そうだよね。」
リンはそっか、そっか、と言いながら、的の方へと向き、銃を構えた。
「リン、照準は両目で合わせろ。片目じゃ、ずれるぞ。」
「イエッサー!」
「いや、軍隊じゃねぇんだから、その受答えはどうかと思うぞ・・・。」
「・・・イエス、エリオット!」
「間違っちゃーいねぇんだけどなー。」
「りょ〜かいで〜す。」
「うちの使用人の真似はしなくていい。」
そのようにどうでもいいやり取りをしていた二人が黙った。