氷帝
□待ち
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久々の仕事に疲れむくんだ足を見ながら歩くと、ふと部屋の扉の前に何かいる。
目線だけ上げて見ると、制服を着た男の子がうずくまってる。
ふわふわの金髪に、横に置かれたテニスバック。
あぁ、この寒いのに待っててくれたんだ。
「ジロー」
私が言える精一杯の優しい声で彼を呼ぶ。
ぴくりと肩が揺れるともぞもぞと顔を上げた。
「あ…おかえり…」
ふにゃりと笑い眠そうにあくびをしたジローの前にしゃがみ、両手でジローのほっぺを挟むと相当待ったのかひんやりと冷たいのが伝わる。
「この前鍵渡したんだから自由に入っていいんだよ?こんな寒いのに部屋に入らないで待つなんて…」
「もらったけど、なんか使うのもったいなくて」
はにかみ笑うジローの手をとり一緒に立つとジローに覆いかぶさるように抱き締められる。
背中に回された手のひらも冷たくて、一瞬びくっと震えるとさらにぎゅっと強く抱き締められた。
それに応えるようにジローの腰に腕を回し、少し温かくなった胸に頭を押し付けた。
「ジロー」
「ん?」
「…ただいま」
「おかえり。仕事お疲れ様」
左手はそのまま背中に、右手を頭に乗せ優しく撫でてくれる。
ただそれだけなのに、疲れは一気になくなり明日もがんばろうと思えるのだから不思議だ。
さて、夕飯は何にしようかな?
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