氷帝

□待ち
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今年初めての仕事。
たまりにたまった雑用をこなし、溜め息をつきながらタイムカードを切ったのは普段帰る時間の2時間もあとだった。

だるくなった足を引きずって、駅から歩いて5分もかからない家に帰る。
たった5分なのにどこでもドアが欲しいなんて思うのは怠慢だけど、社会人ならこの気持ちがわかるはず。
たかが5分、されど5分。
5分というのは計り知れないくらい大きい。






エレベーターに乗りボタンを押し扉が閉まると、壁に寄り掛かりゆっくりまた溜め息を吐いた。

こんなに疲れるまで働いて、私はこの先どうしたいんだろう。
エレベーターのガラスに映る自分の顔は酷いもので、化粧が崩れ目の下にはうっすらクマが浮き出てる。
昨日、今日の集まりの資料作りでパソコンと格闘したせいかな。
今日はすぐシャワーを浴びて早々に寝よう。
明日もあさっても会社がある。
あくびなんかしたらまたうるさい課長に言われる。



うちのある階に止まると扉が開き入れ違いで両手にゴミ袋を持ったおばさんが。
夜にゴミを出すのは禁止されてますよ、なんて言う気力も体力も度胸もあるわけなく、無情に閉まった扉を横目にまた溜め息をついた。
…‥幸せがまたなくなっちゃった。





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