青祓Short
□本懐〜Clover Love〜
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「・・・・・勝呂竜士くんです!」
「・・・・・はぁ。」
メフィストは後日特別任務を言い渡すと言い、私に帰るよう促した。そして次の日の塾で、全員候補生昇格が言い渡された。お祝いにもんじゃをご馳走するというメフィストの言葉に、塾生みんなで駄菓子屋に向かった。
「・・・・・理事長、特別任務って。」
「あー!言い忘れてました☆」
ポンッと白い封筒を出すと、それを私に差し出す。そして竜士も呼び出すと、事情説明を始めた。・・・私の協調性が不足しているため、候補生には合格させたが追試、といった体裁で行うらしい。
「・・・ということなので、1番協調性のある勝呂くんに組んでもらうことになりました。」
「はぁ・・・なるほど。」
「任務に関しての説明はその紙に全て、記載しておきましたので、解決し次第報告ということで。」
理事長はそう言うと、もんじゃを焼いている席に戻って行った。
「・・・・・中、開けてみぃ。」
「うん。・・・・・『正十字学園街にて違法行為を行っている生徒の摘発』って全然悪魔関係ないやん。」
しかも違法行為って大雑把過ぎて何のことだかさっぱり分からない。
「つまり聞き込みして調べろっちゅーことやろな。情報はこれで全部なんやろうし。」
「・・・・・うわぁ。」
めんどくさい。法律違反しているなら警察に言えば済む話やないの?とはいえこれが任務だと言われてしまえば、やらざるを得ない。とは言え知ってそうな人物に話を聞いていくのは、1人では到底出来ない。
「そうやな・・・とりあえずクラスの男子には俺が聞いてみる。彩音は女子に聞いてくれ。」
「分かった。・・・・・けど、なんて聞けばええんやろ。」
「問題はそこやなぁ・・・」
とりあえず後でもっかい話し合おと言う竜士がメアドを教えろと言う。・・・そう言えば廉造のしかメアドは知らなかった。一緒に住んでたけど、話すことなんか無かったし。
「それじゃなんか気ぃついたら連絡せぇよ。1人でなんかしようとしたら任務の意味も無くなるで。」
「・・・・・分かっとるて。」
その日はそれで話を打ち切り、次の日の昼休みに作戦会議をすることになった。廉造達には理由を説明し、2人で空き教室を貸し切り話し合う。
「それとなく男子に聞いてみたんやけど、特にこれやっちゅーのはなかったで。」
「・・・・・少し調べてみたんやけど、学園裏サイトにそれっぽいのはあったで。」
私は公式サイトのURLに英文を追加すると、画面が切り替わり掲示板サイトになる。いかにもな黒い背景に白抜きの文字でタイトルは無い。書き込み式のスレッドが近いかもしれない。
「何やこれ・・・こんなんあったんか!?」
「先輩から裏サイトの話聞いてきたんよ。ここで何度か定期的に集会情報があるらしいんやけど・・・・・あった、これや。」
生徒や教師の誹謗中傷、役立ちそうな寮の抜け道などの情報の中に「次の金曜夜、club猫歩にて」と書き込まれていた。作成者の名前は「不明」。
「とりあえず怪しそうなんはこれくらいやし、この場所に行ってみようと思うんやけど、どうする?」
「そんなん行くに決まっとるやろ。お前1人で行かせられるか。」
「・・・分かった。とりあえずこの集会に関してもうちょい探っとくわ。行っても中に入れなかったらあかんやろ?」
話し合いは早々に切り上げ、私はこの情報を教えてくれた先輩に再び連絡を取る。こっちに来てから夜中ふらついていた私に声をかけ、一晩過ごした(何もしてない)先輩なのだが、それ以来何かと気にかけてもらっているのだ。
「おん、気をつけてな。」
先輩からの返事では、知り合いからの紹介が無いと入れないシステムだと教えてもらった。とは言ってもその先輩は入ったことが無いらしく、紹介することは出来ないと付け加えられて。中で何を行っているのかも分からないそうだ。とりあえずここまでの情報を竜士に送っておく。
「どーですか?調査の方は?」
「りっ理事長!?ここ6階・・・・・というより女子寮ですよ!?」
「私は常に神出鬼没を心掛けているのでね☆」
コウモリのようにぶら下がってこちらを覗き込む理事長は、ひらりと部屋の中に入った。同室の人がいなくて本当に良かった。
「ちゃんと協力、してますか?」
「とりあえずは・・・・・でも、こんなんで本当に意味あるんですか?」
「それはあなたの気持ち次第ですねぇ・・・。」
「・・・とりあえず部屋の中物色するのやめてもらえません?」
人の部屋を興味津々に見るのはやめて欲しい。とは言っても教科書と本ばかりの殺風景な部屋なのだが、クローゼットを覗かれるのはさすがに怒る。
「・・・・・殺風景ですね。仕方ないのであなたでも見ておきますか。」
「は?」
「いやぁ・・・・・いい眺めだ。」
・・・・・お風呂上がりだったから、下着にキャミソールだけの格好であることを今になって思い出す。
「・・・・・悪魔にも性欲なんてあるんですか?」
「手厳しいですねぇ〜。・・・無いと言えば嘘になりますね。」
指先で顎を持ち上げられる。下卑た笑い、と言うよりは私の反応を楽しんでいるように笑っている。間近に迫る顔を黙って見ていると、パッと手を離された。
「美人なのにもったいない・・・もう少し表情豊かなら良いと思うんですけどね・・・。」
「それ、さりげなくバカにしてません?感情出すのが苦手なだけで、機械とは違いますよ?」
「・・・・・なるほど、その笑顔で男をオトしているんですね。これはモテるわけです。」
私がふっと笑うと、理事長はまじまじと私を見てため息をついた。モテるモテないなんか気にしたこともなかったし、赤の他人にモテても全く嬉しくない。
「大勢にモテたいわけじゃないですし、心底どうでもいいです。」
「それは意外ですねぇ。・・・度々夜中に寮を抜け出して、男を誘って」
どんっと壁に理事長を押し当てると、相手が思わず息を飲むような形相で迫った。