さよならの花束を君に (完)

□怖いわけではないのです
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朝起きて食堂に行くと、すでに雪男が起きていてご飯を食べていた。

「おはよー・・・・・」
「おはようございます。早いですね。」
「うん・・・・・今日祓魔屋に行こうかと思ってさ・・・・・」

寝起きが弱いことを知っている雪男はクスクスと笑っているが、朝から元気な方が疑うよ。席につくとホカホカの和朝食が用意されている。・・・・・ん?いつの間に?

「僕はもう行きますね。・・・・・兄をさっき起こしたんですけど、全く起きないんですよね。」
「んー?・・・・・コップに水汲んでかけてくれば?」

さすがにそれは可哀想なのか、もう一度起こしてくるという雪男を送り出すと引き続き食べ始めた。しばらくしてボサボサの頭によれたTシャツという出で立ちで燐がやってきた。

「すごい格好だね。・・・・・おはよ。」
「昨日遅くまで雪男に課題させられてたんだよ・・・・・」

初日からハードだな。というか課題は薬草の名前を覚えるくらいでは?アロエやらウコンはお馴染みだと思うけど・・・・・。

食器を片付け、一応誰もいない厨房に「ご馳走様でした」と声をかけた。そして燐に町で買い物してくると伝えると、祓魔屋へ続く鍵を開けた。

祓魔師専門の用品店である祓魔屋は薬草や聖水を取り扱っており、祓魔師しか入れないお店になっている。女将さんが切り盛りしており、雪男と同い年の娘さんがいる。

「こんにちはー!女将さん、お久しぶりです。」
「零ちゃん!いらっしゃい!」

私の母も生きていたらたぶんこんな感じなのかな、なんて思いつつ必要なもののリストを渡す。女将さんは手早く用意すると袋に包んでくれる。

「しえみちゃんはどう?元気?」
「今は冷戦中でねぇ。・・・・・足が動かないってのに庭から離れないからさ。」

一人娘であるしえみちゃんは、亡くなった祖母の庭を守るために離れの倉庫で寝泊まりして庭に篭もりっきりらしい。雪男が気にかけているため、私は口出ししていないが不安要素の一つである。

「はい、これで全部だよ。領収書はまた理事長宛かい?」
「ええ、ヨハン・ファウストで。」

基本的に祓魔師関連の装備は立て替え方式で、理事長持ちである。体力がある時は式神で祓うため装備は減らないが、悪魔によっては物理攻撃の方が良い時もある。

祓魔屋を後にした私は、部屋に戻って荷物を置くと町へと向かった。
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