さよならの花束を君に (完)

□はじまりの場所で
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「零さんがいなくなった!?」

息を切らして駆け込んできた勝呂に雪男は驚きを隠せなかった。昨日医務室に連れていったあと、その場で寝落ちしてしまったらしいが、朝起きたらすでにいなかったそうだ。

「寮に戻ったんかとも思ったんですけど、そうでもないならどこへ・・・・・」
「分かりました。とりあえず塾や近くを探してみましょう。」

雪男はそう言うと、他の教師にも連絡をして零の居場所を知っているか聞き始めた。勝呂も志摩や子猫丸に連絡をすると、再び寮の外へと探しに行った。




「おーどうした雪男ー?」
『零さんが医務室からいなくなったようなんですが、シュラさんなにか知りませんか?』
「はぁ!?いなくなった!?」

まさかという思いがシュラの中で浮かび上がる。しかし昨日あの部屋には、あたしとメフィストしかいなかったはず。・・・・・でももしかして?

「分かった。あたしも探す。だがメフィストには知られるな、いいな?」
『えっ・・・?・・・分かりました。』

こういう時の深く聞いてこない雪男に感謝しつつ、シュラは心当たりのある場所へと向かった。



その頃零は、まだ痛む体を気にすることなく、京都へ戻ってきていた。綺麗になった石階段を上がると、所々修理された両親の神社に入る。

昨日燐のことが心配でシュラに付けておいた盗聴用のコールタールの使い魔が拾った本当の真実。両親は青い夜で死んだんじゃない、私のせいで死んだのだ。本殿はまだ修理されていないため、床に穴があき血の跡が残ったままだ。

そして私は悪魔と取引をした先々代、祖父のせいでこうなってしまったのだ。呪いが解けなければ、死ぬしかない・・・。そもそも呪いがそんな簡単に解けるものなのか。

「いっそここで死ぬ・・・・・?」

自嘲気味に笑うが、死ぬかもしれない恐怖に体の震えは止まらなかった。自殺なんてする勇気はなかったし、何よりも好きな人と離れないといけない苦しさで胸が押しつぶされそうだった。

柱に寄りかかり膝を抱えると、何にも見られないように静かに涙を流した。体内で燻る悲しみがそのまま流れ出ていってしまうことを祈った。この出来事が全て夢であればいいのに。
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