さよならの花束を君に (完)

□山中の守護神 ※選択
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「状況は分かったが、憑いていた悪魔が何か分からないと根本的な治療にはならねぇぞ。」
「そんな・・・・・」

子猫丸が騎士団本部にドクターヘリの要請をしている間も、交代で詠唱と薬草の交換をしている。何も出来ない自分が腹立たしくて、彼女の右手を握ることしかできない。

「ヘリは20分後に来るそうですよ!」
「20分もか・・・厳しいな。」

2人とも手を零の血で真っ赤に汚しており、その出血の多さにこのまま死んでしまうのではないかと怯えた。そこへ強い風が吹いてきて、ドクターヘリが来たのかと空を見上げる。

「あれは・・・・・天狗!?」

大きな翼を優雅にはためかせ袈裟を着た鳥のような人は、地面に降り立つと深々と頭を下げた。

「私はこの山の守り神をしているものです。今回私の息子がご迷惑をおかけして申し訳ない。」

息子が魔障で亡くなったことを受け入れられず、刀にその魂を封印して現世に留めようとしたこと。その魂をゴーストと勘違いした悪魔が刀に取り憑き、自分を御堂の下層に閉じ込めていたことを話した。

「息子の不始末は私の不始末。その呪いは私が持っていきます。」

天狗が傷ついた腕に手をかざすと、黒いモヤが立ち上り、出血が弱まり傷も広がらなくなった。気づいた時には天狗は消えており、折れた剣もどこかに消えていた。

ドクターヘリが到着し、俺達も同行し正十字騎士団の医務室へ向かった。傷口を縫い合わせて包帯を巻き、点滴を行った。

「・・・・・あれ。」
「零気がついたか!ここは騎士団の医務室やから安心しい。」

ぼんやりとした目で周りを見回す零を見て、目が覚めたことに安堵した。

「・・・・・三輪くんと勝呂くんは、大丈夫?」
「俺達は大丈夫や。それより自分の心配しとけ。」
「怪我が無いなら、よかった・・・・・。」

この期に及んで他人の心配ばかりする彼女に、胸が痛んだ。が、こうなったのは自分の力量も弁えずに行動した自分が馬鹿だったからだ。1歩間違えば大事な人を失っていたかもしれない。

「俺、もっと勉強して強うなって、お前を守れるようになる。もうこんな怪我させんように。」
「・・・ありがとう。」

ところでいつまで手を握ってるの?と聞かれたが、離したくない気持ちでいっぱいだったため、いつまでもやと答えた。
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