雄英高校で学校生活を送る。

□第1章
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最近ふと、『何を間違えたのだろう。』と思うことがある。


あ、いきなり失礼します。見切もへです。現在雄英高校1年の現役女子校生です。
アザミさんに「間違えた」と言われながら意識を失ってから、目が覚めると赤ちゃんになっていたので第3の人生を歩んでいます。


「もへ。先行っちゃうよ。」

『あ!待って響香!』


ボーッとして立ち止まっていた私に気がつき声をかけたのは響香こと耳郎響香。仲の良い方だと自分では思っている。


「どしたの?ボーッとして。」

『ん?別に何でもないよ。』


ヘラリと笑い、“個性”で響香を“欺く”。
すると彼女は少し考える素振りを見せた後、「もへって少し変わってるよね。」と失礼な事を言ってきた。


『何その微妙に失礼な⋯』

「褒めてる褒めてる。」


若干疑問と不満が残るが、まあしょうがないだろうと結論づける。本当に変わっているのだから。少しじゃないけどね。




私が生まれたこの世界には“ 個性”という不思議なものがあった。10人10色、様々な能力をそれぞれ持っていて、ヒーローがいれば悪者もいる。そんな世界だ。

そんな世界に生まれた私は昔の事を全て覚えているだけでなく、自分を含むメカクシ団のメンバー全員分の能力を扱えるチート人間になっていた。相変わらず目が赤くなるが、幼少期からの努力で2つまでなら同時に能力を使えるようになっていた。




『あ〜あ。今日の授業も大変なのかな?』

「毎日大変だよね。」


ヒーロー科故に日々の授業も大変だ。
響香とそんな話をしながら教室へ向かう私の耳に届いた第三者の声。


「出たぜ、アレが見切もへだ。」

「あぁ、あの個性“アザミ”の?」

「そうそう。中学の頃からヒーローやってるらしいぜ。」

「楽で良いよな〜。もう将来決まってんじゃん。」

「でも化け物じゃね、個性の種類多いんだろ?キミわりぃ。」

「「ハハハハハ!!」」


何処から聞いてきたのか。内心ため息をつきながら無視をして通りすぎる。所詮普通科の妬みというやつだ。
だが響香は気に入らなかったらしく、爆音で心音を彼らにお届けしていた。教室に入っても彼女は不機嫌だった。



『ありがとね、響香。』

「別に。逆になんか、ごめん。」

『気にしないで。本当の事だもん。』



私が言うと、彼女は座ったばかりなのにガタンッと派手な音をたてて立ち上がった。その音で周りの視線を集めた事に響香は気付かぬまま珍しく声を荒らげた。


「もへは!化け物なんかじゃない!!」

『⋯⋯⋯響香、私は⋯』


化け物だよ。その言葉が出てこないのは、響香の目に涙が溜まっているのに気がついてしまったから。本日2度目の“欺く”を使い、笑顔で『ありがとう』と言った。響香は幾分か落ち着き、再び自席に座った。

本当は笑顔なんか出せない。“欺く”に感謝だ。

周りは知らないが能力を使う時はいつも欺いて目を赤くさせていない。そして何故普通科の子達が個性“ アザミ”と言ったのか。


この世界で“個性”の象徴として神様みたいな扱いを受けているアザミさんから受け継いだこの能力。この世界ではアザミさんの存在自体に賛否両論ある。勿論それはアザミさんから能力を引き継いだ私も対象なわけで。


「何かあったの?」

『あ、出久。別に?何も無いよ?』


高校入学前からオールマイトを通じて仲良くなっていた出久は心配そうな顔で問いかけてきた。笑いながら返せば、少しホッとしたような表情が返ってきた。どうやら響香の大声でみんなびっくりしたらしい。なるほど、と顔を上げると百と目が合う。彼女もまた心配そうな顔をしていたので笑顔で手を振ると安堵の表情を浮かべていた。

本当に、周りに恵まれているな。

としみじみと思う。


チャイムの音で皆がガタガタと席につき、教師が入ってくる。そして始まるいつもの日常。教科書が全ての座学は苦手だ。もう全て覚えてしまっていて退屈だからだ。“焼き付ける”は凄いけれど退屈な能力でもある。私は前を向いて教師の話しを聞いているように欺きながら窓の外を見る。


そしてふと、前前世での大好きだった曲の事を考える。

『(もう1度⋯聞きたいな。)』

「見切、ここの答えは?」


密かに考え事をしていたのが相澤先生にバレたのか、当てられる。正答を声に出せば「⋯分かっているのなら良い。」とちょっと呆れ気味に言われた。何故呆れ気味。

そこでチャイムが鳴り次の授業へと頭を切り替えた。次は体育だったはずだ。




『はあーーぁぁぁぁ、づがれだー』

「ホントね⋯」


4時間目の体育ほどキツイものはなかなか無い。教室行って着替えてー、お昼ご飯!と喜んでいると百が不思議そうに尋ねてきた。


「あの⋯もへさん。3時限目の授業で何故答えられたのですか?」


『へ?』と間抜けな声を出す私に響香が続けた。


「あ、私もそれ思った。あそこ、まだ説明前だったからね?もへ?」


問い詰められるように聞かれれば、逃げたくなるのが人の不思議な心理だ。ましてや、私の能力は全てが公に明かされている訳ではない。今朝の普通科の彼らだって、そんなに知らない筈だ。


『えっ⋯と⋯。の、能力の一部⋯かな?』

「あ!こら待て!」


答えるが早いか走り出すのが早いか。私は“ 醒ます”で力を軽く使い教室へと走った。軽くじゃないと床壊れちゃうもんね。途中、飯田くんに注意されたけど、無視無視!


『あ、撒いたけど結局お昼一緒に食べるじゃん』と1人で考えていると丁度2人が来た。


『2人とも〜おっつ〜☆』

「もへ⋯ハァ、ハァ⋯速すぎ⋯」

「流石に、追いつけませんわ⋯。」




最近は3人で昼食を食べるので、ここからは2人も合流。そして食べ終わったらおしゃべりタイム。


「てかさーもへ?」

『ん?何でしょう、響香サン?』


ミルクティーをズズッとストローで啜りながら答える。ちょっと今の行儀悪かったな。


「実質、個性“ アザミ”は能力いくつあるの?」

「あ、私も思いましたわ。」

「この教室にいるみんな気になってるよ。」


『えぇ〜⋯それ聞いちゃう?』と呟く。教室中からの視線には正直気がついていた。言っても引かないかなぁ。


わざと指を折りながら数えると次第にざわめきが強くなる。


『えーと、⋯⋯⋯11こ。』

「「「はあぁ!???!」」」

『うるせー!教室内で声を揃えるな!』

「いやだって⋯11って⋯⋯⋯」





それから教室内は大混乱。能力を順番に説明させられる事に。


『いくよ⋯⋯⋯
No.1、目を“ 隠す”!存在感を薄くする!
No.2、目を“盗む”!他人の心を読む!
No.3、目を“ 欺く”!見た目を変える!
No.4、目で“ 操る”!人や物の動きを操る!
No.5、目を“ 合わせる”!人を石化させる!
No.6、目を“ 奪う”!視線を集める!
No.7、目を“ 覚ます”!寝なくてもOK!
No.8、目に“ 焼き付ける”!超記憶力!
No.9、目を“ 凝らす”!千里眼!
No.10、目を“ 醒ます”!超身体能力!
No.11、目を“ かける”!テレパシー!

以上!!!』

「一気に言うな」

「ホントだぜ⋯もう何が何だか⋯。」


不満の声が続々と上がる中、私は静かに姿を隠した。


「「もへが消えた!!?」」

「探せ!」や「これも個性?!」等と声を上げながらみんなが私を探しに教室から出ていった。ここにいるのに。まさに灯台もと暗し。


その後は予鈴と共に姿を現した私にみんなは愕然としていた。


『これが能力のひとつ、“隠す”だよ☆』
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