何度も君に恋をする

□邪魔者はいらないの
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「おれさ」

『うん』

「体育すきじゃないんだよね」

『……』


午前最後の授業は男女別の体育。それぞれ更衣室があるのだけれど言わずも二人して人混みが嫌いなので、いつも時間をずらしては着替えに行くことがお決まりになっていて。

今日もある程度人波が引いたところで重たい腰を上げて教室を出たら、酷く足元を冷たい空気が通り抜けて行った。廊下の窓から見える景色が寒々しく感じたのは、空の青さが薄くなってきたことや木々が枯れ葉を纏っているからだと思う。

いや、それはさておき。ジャージに着替えた後にゆるゆると体育館に向かっていると研磨が「実はさ、」みたいな感じに話し出すからとりあえず黙る。



「…寒いの、嫌だし」

『ボールとか、当たったら痛いよね』

「うん」

『今日、バスケらしいよ』

「やだなぁ…」



嫌とか言いながら積極的に参加する気は皆無。と言うか、研磨が体育が好きじゃないことも寒いのが苦手なことも、全部知ってることで。今更な感じなので特に驚くこともない。

だけど、11月になってから本当に寒くなってきて。驚くことと言えば、自分がこんなに長い間誰かと一緒に過ごしていることくらい。入学してから7ヶ月、普通なら短い期間だと思われるかもしれないけれど今までずっと何をするのも一人だったから。


「うわ、寒…」

『…』


体育館に近付くにつれて寒さが増してきて、隣で研磨が眉根を寄せておもむろにジャージのポケットに手を突っ込んだ。寒いのは、嫌い。足先が冷えるのも、耳が冷たくなるのも、好きじゃない。

勿論、人と喋ったり何かを共有することも好きじゃないけれど。何故かこの時ばかりは違っていて、指先が出ているジャージの両方の袖口を口元に当てて、ふう、と小さく息を吐き出した。ジャージ越しにほわりと滲む温もりがあたしには酷く新鮮で。


『研磨』

「ん?」

『寒いね』

「…うん、寒いね」


当たり前のことを口にするのは、思ったよりも難しくて、気恥ずかしくて。研磨の顔を直接見れないあたしは、口元を覆ったまま歩き続けた。
 
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