何度も君に恋をする

□全てはあの日から
1ページ/10ページ

入学式の時に学校案内という時間が設けられて、音駒高校についての色々な話を聞いた覚えがある。その中でルールの一つとして「他の学年のクラスには入らないようにしましょう」という決まり事があった。

まあ、学校側としては他学年とのトラブルは避けましょう的なものだと思うけれど。


「紬、あのさ」

『…研磨、待って』

「また?」

『うん、予感がする』


授業が終わり休憩時間に入ると同時に嫌な予感がしたあたしは次の授業の教科書とノートを机の上に出すと、席を立った。研磨とゲームしようと思ってたのに。

気配を消しつつ教室を脱出して階段の方へと小走りで移動していると。



「あ!真白さーん!!」

『っ』



背後から迷惑な程に大きな声であたしの名前を呼ぶのは、言うまでもなく黒尾先輩で。勿論、あたしには振り向いて手を振るとか、そんな高度なコミュニケーション能力は無いので聞こえないふりをして階段を降りて行く。

まあ、あたしが聞こえないふりをしたり、スッと消えた所で追い掛けてくるのを止める訳がないので引き続き逃亡。

こっちは必死で階段を降りているというのに、残念ながら足の長さが違う為本気で逃げないとすぐに追い付かれてしまう。


「真白さーん、待ってー」

『っ』


年齢に対して言えば運動不足の部類に入るあたしは既に息切れがするというのに、日々バレーで鍛えられている黒尾先輩の声がすぐ上で聞こえてきてぎょっとする。

階段の途中にある踊り場で一瞬足を止めたけれど、またすぐに下へと向かい出す。とは言っても、教室ばかりが並ぶ校内で逃げ場なんてなくて捕まるのも時間の問題だった。


『(…そういえば、)』


一階まで降りようとした時に、ふと思い出したのは図書室の存在だった。このまま走っても、後は時間の問題だし。それならいっそのこと隠れていた方がいいかも。

考える時間もなく一階に降りようとしていた体の向きを変えて目標を図書室へと行こうとした時、壁が死角になって人がいることに気付かなかった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ