何度も君に恋をする

□揺らぐ心
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「で、大事なのはここからだ。よく聞いておくように」


午後の授業が始まり半分の時間を過ぎた頃、教室の中には心地よい日差しが差し込み、空腹を満たした人達の眠気を誘っている。

頬杖をついて眠気と格闘している人、諦めて机に突っ伏している人。決して寝ている人に対して否定的な訳ではなくて、授業の邪魔にならなければ別に何をしても個人の勝手かな、と思う訳で。

確かに満腹になった後で聞く年配の男の先生の声なんて眠気を誘っているようにしか思えないし、チョークが黒板を滑る音だって時々ゲームの効果音に聞こえてしまって意識が逸れてしまう。

そもそも、トモダチのいないあたしには結果となる試験対策は授業中に起きて先生の話をしっかりと聞いてノートをまとめるという術しかない。後で誰かにノートを借りたり、数人で勉強してヤマを張るだとか、そういった選択肢はないのだから。

そんな学生生活をずっと送ってきたものだから、随分とノートの書き込み方には自分に合った方法を見出だせていて、有り難いことに試験だからといって慌てふためくことは無い。

黒板を見ながら要点をまとめ、同時に先生の言っている内容から重要な点をノートの端に書き込む。


と、


『……』


黒板を見ていると、前の席で研磨の頭がこっくりと小さく揺れているのが視界に映る。授業が始まる前に朝練もあるみたいだし、ご飯を食べた後の授業なんて眠たくて仕方ないだろうなぁ。

そんなことを思いながら研磨の後頭部を眺めていると、眠気がピークに達したのかガクッと一瞬体が右へと傾く。あ、今の絶対ノートにシャーペンの先がシャッてなった。

予想通り、ノートにシャーペンの痕がついたのか研磨は一生懸命、消ゴムで何かを消しているようだった。

朝練して、授業を受けて、また夜遅くまで部活して。土日も朝から夜までバレー漬け。想像しただけで高校生活を投げ出したくなるような疲労感が襲ってくる。あたしには絶対無理。


「はい。じゃあ今日の授業はここまで」


先生の声が教室に響いた数秒後にチャイムが鳴り響いて、午後の授業がひとつ終わった。
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