何度も君に恋をする
□タイムリミット
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事の発端は夜久先輩の何気ない一言から始まった。
「なんか寒くねー?」
薄い水色の空に千切れそうな雲がゆったりと浮かび、季節は秋。勿論、今までの春と夏とを比べると屋上でのお昼ご飯もそろそろ寒くなってくる。
皆のご飯もカップ麺や肉まんだったりと徐々に温かいものへと変わっていく中、あたしのご飯は相も変わらずアップルデニッシュと牛乳がセット。そろそろココアが欲しくなるなあ、なんて。
「夜久さん、もう十月ですよ。そりゃ寒くもな…って、痛い!!何で叩くの!!」
「お前が冷静に返すからだよ!!」
「見た!?紬ちゃん!?夜っ久んが叩くんだけど!!!」
『……』
「はーい、ざーんねーん!紬は黒尾に興味ないってさー。つーか、何で下の名前で呼んでるんだよ!!」
「教えなーい!ね、紬ちゃん」
『……』
「黒尾、お前鋼の心の持ち主かよ。尊敬に値する」
いつもの屋上、いつもの座り方。左に研磨、右に黒尾先輩とその隣に夜久先輩が座っていて右耳の鼓膜がやけに疲れた気がした。相変わらず二人の言い合いにあたしは関与しないけれど、よくこんなに会話が続くことには感心。
というか、研磨とゲーム中なのでそれどころじゃない。
「研磨と真白さんは雰囲気が似てるせいか、兄妹みたいだな」
「あー。確かに!!目元?が似てるんですかねー」
「山本うるせー!似てるけど似てないんです!!紬ちゃんは可愛いんですっ!!!」
「黒尾、お前紬のことになると部活以上に必死だな」
「当たり前でしょ!!!」
それどころじゃないのに、いつものメンバーに加えて海先輩と山本くんも屋上に来ていて教室にいるのと変わらないくらいに賑やか。
スマホの画面を指先で触りつつも、皆の会話は勝手に流れ込んでくる訳で。一瞬指を止めて斜め上を見上げると、はた、と研磨と視線がぶつかる。