何度も君に恋をする
□君の知らない世界
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『これ美味しいね』
「うん、美味しい」
『スーパーで見つけたの』
「ふーん…。紬、スーパーとか行くんだ」
『ああ、うん。ご飯作ったりするから…』
「ご飯…?」
昨日の夜ご飯の買い出しに行った時、たまたま「蜜たっぷり!甘くて美味しいりんご」と、色とりどりのポップが目に入って思わず一個買ってみた。
一人で一個は食べられないので、研磨と食べようと切ってタッパーに入れて来た訳で。いつものように屋上に来たあたし達は、お昼ご飯を食べた後のりんごに舌鼓を打っていたところ。
『…さすがにお腹いっぱい』
「だね、でも美味しい。ありがと」
『うん』
まだ日中の陽は暑く感じる時もあるけれど、随分と風も涼しくなって。ここが寒くなったらどこでご飯食べよう。
と、研磨に話をしようと思ったけど。ふと山本くんとのことが気になって口をきゅ、と閉じてしまった。別にあたしが気にすることでもないのだけれど、聞いて研磨にしつこいって思われるのも嫌だし。
「これ食べたら、モンハンしよ」
『うん、分かった』
二人でしゃくしゃくと最後の一個ずつのりんごを食べていると、屋上の扉の向こう側から何やら騒がしい声が聞こえてきた。
まあ、それが誰かというのは言わなくても分かるくらいの声量なので敢えて話題にもせず。研磨も同じく静かにりんごを食べている。
「だからさー!絶対こっちの方が美味しいと思うんだよね、俺は!!」
「はぁー?美味しいかどうかは真白さんが決めるんですー!!」
「見てみろよ、このりんごの形したケーキ!!!紬は絶対こっちが好きだろ!!!」
「そんなの分かんねーだろ!俺の持ってきた季節限定りんごワッフルの方が上品に見えるだろ!!」
「何だよ上品って!!!」
『……』
「うるさい…」
突如バーン!と勢いよく扉が開いたかと思えば、黒尾先輩と夜久先輩が大きな声で言い合いをしながら入場。
どこから大声でこの言い合いしてきたんだろうか、心底不安になる。