幸せのある場所
□彼と彼女の最後の一年間
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翌日、あたしは日直でホームルームも終わったから後は日誌を書いて終わりだと思っていたのに先生の最後の一言。
「今日の日直は…、篠田か。英語の明日の小テスト。今日提出したノートから出すらしいから職員室に取りに来てくれー」
と、最後の最後に仕事を託された。明日の小テストなのに何で今日提出したノートから出題するのか、意味が分からない。
皆のブーイングが響く中、教室を出ると先生と一緒に職員室へと向かう。「まだ帰るなよー」と先生が皆に言い残し、あたしは皆の英語のノートを教室に持って帰って来た訳だけど。
ここでまた問題発生。
『何でいない…!!』
「あ…あぁー。藍が出て行った後、そそくさ帰って行ったよ」
『は?』
「お前らまだ喧嘩してんの?昨日も言い合ってたけどさー、幼馴染みなら仲良くしろよ」
『ケンカナンテシテマセン』
「片言!?つーか顔こえーよ!!」
『あんのヘタレ髭…!!!』
「(うわー?藍、本気で怒ってるー)」
「(こいつ、怒っても可愛いよなー)」
「(東峰、ボロくそ言われてんな…)」
既に空になっていた旭の机の前に立ち尽くしたあたしは怒りのあまり、ノートがくしゃ、と少し歪むくらい手に力が入っていた。クラスメイトの心の声を察する余裕もないくらいに。
後で先生から訂正が入るのも承知で、いつもなら丁寧にまとめる日誌を殴り書きで済ませて日直の仕事をさっさと終わらせた。
急いで廊下を走っていると、すれ違う先生に「廊下は走らない!」と注意を受けるけど、足を止めることはなかった。階段を駆け下りるけど旭の姿はない。もう帰ってしまったのかと一階まで下りると、曲がり角の向こうに旭の後ろ姿が見えて声を掛けようとしたけど、もう一人の姿が奥に見えて黙って足を止めた。