*FF15夢小説*
□KINGSGLAIVE
1ページ/3ページ
燃え盛るインソムニアを背に、無我夢中で走り続けた。ニックスは今も王都で戦っている。瓦礫の崩れる音、燃える炎の音、シガイの叫び声が耳に入ってくるが、振り返って足を止めることは許されない。
「ニックス...死なないで...!」
魔法の力は消えた。彼に加勢することは出来ない。マリンは無力だった。
【KINGSGLAIVE】
「親父は、ルーナは!王子が死んだってどういうことだ、説明しろ!」
ノクトの声が雨の中に響く。一行は、ガーディナで王都陥落の知らせを受け、急いでインソムニアの近くまで戻ってきたところだった。上空には二フルハイム帝国の艦隊が常駐しており、戻るに戻れない状況だ。電話先のコル将軍の声色は疲弊しきっており、覇気が感じられない。
そして、無情にもレギス陛下の死去が伝えられる。電話を切ったノクトの腕が、力なく降ろされた。
「将軍か?...何と」
「ハンマーヘッドに行くって...」
「陛下は」
グラディオの質問には答えられなかった。レギス陛下が、父親が死んでしまったなど、ノクトは信じられなかった。―――いや、信じたくなかった。
陰鬱とした空気の中、レガリアに乗り込む。一行はコル将軍と落ち合う為にハンマーヘッドへ向かうこととなった。
「警護隊はもう機能してねぇんだろうな」
「ああ...将軍が外に出るというくらいだ」
「中はどうなってるんだろう...」
各々が今後について話している中、ノクトは黙りこくっていた。目の前の真実を咀嚼できず、呆然と窓の外を見つめる。仲間達の会話が、じわじわと王都陥落の事実をノクトに突き付けていた。
「これから、俺たちどうするの?」
「まずはハンマーヘッドだな。他は後で考えようぜ」
窓に額をつけて外を眺める。車の振動が頭を揺すり少し痛みが走るが、頭を起こすことはしない。今は脱力感の方が勝っていた。
「!」
突然、視界を黒い物が通り過ぎた。舗装がされていない道の奥、茶色い岩肌やむき出しの地面の上に何かが落ちていたような気がして後ろを振り向く。ノクトは、人のようなものが倒れているのを見つけた。
「イグニス、止めてくれ!」
「どうした?ノクト」
ノクトは車から飛び出すと走り出した。雨で視界が悪いが、近付くにつれてそれが何であるか段々と見えてくる。
―――人だ。
そしてこれは、王の剣や王都警備隊が着ている黒い制服だ。かなり深い傷なのか、制服は赤黒く光を帯びており、周りの地面に血が雨によって流されていた。遅れてイグニス達も追いつく。
「これは...王都の...」
「ああ...」
イグニスも気づいたようだ。うつ伏せで向こうを向いていたので誰かわからなかったので、ノクトは回り込んで倒れている者の顔を観る。そこには、馴染みのある顔があった。
「マリン...!!」
「なっ!?何故こんなところに...」
「おい、マリン、起きろ!!」
「これヤバイよ!すごい傷!!」
全員で駆け寄り、ノクトがマリンの身体を揺すると、ぴくりと指先が動いた。仰向けにして上体を起こすと、薄目を開けてしばらくノクトの顔を見つめる。
「...う、...」
「...マリン、大丈夫か!!」
目の焦点が合い、マリンはようやく自分が誰によって起こされているのか気がついた。
「...ノクト」
「マリン、何があったの?」
「...プロンプトも、イグニスも、グラディオも...無事だったんだ」
マリンの目から一筋の涙が頬を伝い、次第に涙声になっていく。
「わ、わ、マリン!?」
「あのね、ノクト、ごめん...私...陛下...を、守れなかった...」
掠れた声で紡がれた言葉は、ノクトに真実を突きつけた。胸を貫かれるような感覚はあったが、今は憤りではなくマリンを心配する感情の方が勝っていた。
「ごめん...ごめんね...」
「マリン、もういい、もう大丈夫だから。ゆっくり休め」
呻くように謝るマリンをノクトが抱きしめると、腕の中のマリンは再び意識を手放した。
「だいぶ消耗しているようだな。手当が必要だ、一旦レガリアまで運ぼう」
「んじゃ俺が運ぶぜ」
グラディオは軽々とマリンを持ち上げ、レガリアに運んで行った。振動を与えないようにゆっくりと自分の隣に座らせる。そしてイグニスが雨でずぶ濡れの彼女に、自分のジャケットを脱いで身体に掛ける。
「...無いよりはマシだろう」
「だねー。マリン、助かるよね?」
「深い傷を負ってはいるが手当すれば大丈夫そうだな。ノクトが見つけなかったらと思うとぞっとすんな」
「...ああ」
四人は神妙な顔で頷く。もしノクトが見つけていなければ、野生のモンスターの餌食になっていただろう。むしろ、よくここまで無事だったというものだ。
「ハンマーヘッドに着いたら、まずはモーテルにマリンを連れていこう。すぐに手当したい」
「頼むわイグニス」
イグニスは車のドアを閉める。いつもより少し乱暴だったかも知れない。雨で視界が悪かったとは言え、真っ先に見つけられなかった自分自身を責めていた。奥歯を噛み締め、苛立ちを隠しながら、イグニスは車のアクセルを踏んだ。
ハンマーヘッドに着くと、こちらに気づいたシドニーが給油機の前で手を振っていた。
「いらっしゃい!天気も悪くて大変だったね...と...あれ?その子は?」
シドニーが不思議そうな顔で窓を覗き込む。
「あ!シドニー!この子、知り合いのマリンって言うんだ!怪我してるから、ちょっと先にモーテルに連れてくね!」
プロンプトが親指でマリンを指さすと、シドニーは「うん!」と笑顔で頷いた。
「その子、怪我して服がボロボロだね。後で着替えを持ってくるよ」
「ありがてぇ、そうしてやってくれ」
「あぁ、この服は目立つからな」
グラディオは再びマリンを抱きかかえると、モーテルまで運んで行く。シドニーに見送られてノクト、イグニス、プロンプトもそれに続いた。