亜人◇短編
□ブランケット
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今日も予告リストの仕事終えて安定の日を終えた私達。
アジトに帰宅して残りの仕事を終えたら安定のゲームタイム。
しかしいつしか眠ってしまった私。
「…すみません。うっかり寝てました。」
「いいよ。」
佐藤さんの肩に頭を乗せたまま謝罪。
まだ脳みそが停止中。
ぼーっとテレビ画面を見ながら気付く。
「…あれ。映画ですか?」
「そうだよ。奥村君のおかげで無料で映画見放題なんだ。」
「この映画知ってます。宝探しのやつ。主人公なんか若いですね。」
「最初のシリーズだからね。」
「そっか。…んーーっ!コーヒー取ってこよう。佐藤さんは飲みます?」
私は体を大きく伸ばして立ち上がる。
「ああ。」
そしてキッチンに行きお湯を沸かしコーヒーを淹れる。
そして自室の部屋に行きブランケットを持ってまた佐藤さんの部屋に行く。
「はい、佐藤さん。」
「ありがとう。」
「これもどうぞ。」
持ってきた大きめのブランケットを半分佐藤さんの体にかけまた佐藤さんの身体にもたれかかるようにソファに座った。
「私この時間が一番好きです。」
「映画が?」
「…ちがいますよ。佐藤さんとこうやってコーヒーを飲む時間です。」
「日常じゃないか。」
「そうですね。」
「あれ、なんでこの人達は明るい所で松明を焚いてるんですか?」
映画の中の主人公とヒロインが『松明の火が消えてしまう!暗くて見えない!』と焦っているが完全に明るいぞ。
「暗いからだよ。」
「でも明るいように見えます。」
「…。」
「そもそも古代の遺跡で何百年も開かずの扉だったのに何でこんなに蛇が元気なんですか?」
「君はアリストテレスか?」
「はい?」
「煩いよ。」
「…ッ!」
佐藤さんはグイッと私の顔を掴むと口を塞がれた。
佐藤さんの唇と舌が強引に私の口をこじ開けて中を侵略する。
「君は簡単に開けるね。」
「…。」
「気に障った?」
「障りました。非常に遺憾であってはならない事です。」
「今度は政治家みたいな事を言うね。」
頭をポンポンとされてまたテレビ画面に顔を向ける佐藤さん。
ずるい。
私は腕に巻き付きまた保たれる。
「コーヒー飲めないよ。」
「このまま頑張って飲んでみてください。」
「くだらないミッションを作らない。」
「私は如何なる時も下らないミッションを佐藤さんに与えられますよ?」
「へえ。例えば?」
「抱いて下さい。」
「本当にくだらないなぁ。」
「だって寒いですもん。」
「盛ってるんじゃなくて?」
「酷い。でも間違いじゃないか。」
「…君といると退屈しないね。」
「じゃあ結婚します?」
「いいよ。」
「えっ!?本当に!??」
「嘘に決まってるだろ。」
「…どっから嘘ですか?」
「結婚なんて興味無いよ。」
「…。」
「でも、君は好きだよ。」
「本当に!?」
「君みたいな子はなかなか居ないからね。」
「…嬉しいです。」
「はは。本当に変な子だ。」
「褒め言葉ですね?」
「ああ、そうだよ。」
私は嬉しさのあまり思いっきり佐藤さんにハグをした。
佐藤さんの言う『好き』はどういう対象で『好き』なのか分からないけど『好き』という言葉が聞けただけでとても嬉しい。
「佐藤さんの両手足が無くなっても私は佐藤さんを支え続けますね。」
「リセットするから問題無いよ。」
「あ〜、私も佐藤さんと同い年になりたい。」
「何で?」
「佐藤さんが寿命でリセット出来なくなったら寂しいから。」
「あぁ。そんな理由か。」
「そんなって…重大ですよ。」
「まあ、確かに君がどんな老け顔になるか見てみたいものだね。」
「きっと可愛いですよ。」
「そうだね。」
また頭をポンポンしてくれた佐藤さん。
私はその手を握り今度は大人しく映画を観ることにした。
ゴツゴツした節のある男らしい手。
いつまでも握っていたい。