曲者と見た夢

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ある日の放課後絵里架は裏山に来ていた

そして木陰に寝ころび静かに目を閉じる

聞こえてくる木々の揺れる音と少し遠くから聞こえる鳥の声というとても穏やかな空間に眠気を誘われ欠伸をする

「…こそこそしてないで出てきたらどうですか」

絵里架がそういうと繁みの中から雑渡が現れる

「やぁ、昨日ぶりだね」

「まったく…
貴方は暇なんですか」

「これでも組頭だよ
忙しいよ」

「の割には毎日私の前に現れますね」

「ちゃんと仕事を片付けてから来てるよ」

「どうだか…」

雑渡は寝ている絵里架の横に腰を下ろす

「なんで横座り」

「いいじゃないか」

「まぁ…」

絵里架が目を少し開け雑渡の顔を見えるといつもは見せないほど優しそうな顔をしていた

「何かいい事でもあったんですか」

「なぜだい?」

「なんだか今日のあなたはいつもより雰囲気が優しいので」

絵里架の言葉に雑渡は笑い出す

「ははは、そうか」

「何が可笑しいんです」

「いや、君に会えたことがうれしかったと思っていたんだがまさか顔に出ていたとはね」

「会えてうれしいって
貴方はほぼ毎日会いに来ているでしょう」

「そうなんだがね
言っただろう
私は君が欲しい、気に入ったと
そんな君に会えたし
初めは最悪な出会いだったからね」

「私を傷物にしましたからね」

「その言い方やめて
罪悪感が蘇る」

「事実です」

「まぁ何にせよだ…」

雑渡が絵里架の頭を優しくなでる

「私は最近こうして君が話してくれる事が凄くうれしいのだよ」

いつもの少し冷たい目とは違い柔らかく優しくなる目に絵里架は何だか自分では分からない感情が出てくる

「…貴方の物にはなりませんよ」

「えぇ〜〜」

「だけど…こうして貴方と話す事は悪くないとは思うようになりました」

「おや、一歩お近づきになれた感じかな」

「そうなんじゃないですか」

絵里架は起き上がる

「帰るのかい?」

「ええ、もう日が暮れてしまうので」

「それなら私も帰るとするよ」

雑渡も立ち上がりその場から去ろうとした時絵里架が雑渡の名前を呼び呼び止める

「ねぇ…」

「なんだい?」

「次会った時は稽古してくださいよ」

「いいよ
次会う時を楽しみにしているよ」

雑渡は軽く手を振ると一瞬にしてその場から姿を消してしまった

絵里架は忍術学園へと帰る道中でさきほど雑渡の顔を見たとき自分の中に出てきた感情が何なのか分からずただただ胸を抑える事しか出来なかった

(何なんだろうこの感情は
留三郎達に聞くとあの人に会わせろって言われそうで面倒だし
伊作は…当てにならないな
なんだろうこれわ…)

もやもやとする感情を落ち着かせながら学園へと帰ってくる

絵里架は自室へと戻り寝間着に着替えずっと先ほどのもやもやの事を考えるがそれに当てはまる答えが見つからない

「もういいや…
寝よう」

絵里架は考える事を諦め布団に入り寝る事にした
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