魔入りました!入間くん

□MyTeacher
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「わかりました」



 こうして私はテストに備えて、授業が終わったあとは準備室でバラム先生と勉強をした。
 勿論カルエゴ先生も一緒。
 たまに視線を感じるのが気になったけど、今は勉学に励まなくてはと、バラム先生の話をいつも以上にしっかりと聞いて頭に叩き込む。

 自分の理解力の無さはわかってるけど、それでもいつも丁寧にバラム先生は教えてくれる。
 同じ質問をしても更にわかりやすく答えてくれて、呆れたり、怒ったりもしない。
 そんな様子を見ているであろうカルエゴ先生に、後から何を言われるだろうかと内心ドキドキしていたけど、先生は特に何かを言うでもなく、今日の勉強が終ると静かに立ち上がり準備室を出ていく。
 お礼を言いたかったのに言えず、私はバラム先生にお礼を伝えて帰宅する。

 普段生徒に厳しく陰湿な面を見せるカルエゴ先生。
 そんな先生が何も言わなかった。
 もしかしたら呆れて何も言えなかっただけかもしれないけど。
 理解力の無さを何も言わなかったのは、イルマくんとバラム先生だけだったから。



「カルエゴ先生、明日も来てくれるかな……」



 見てるだけでもイライラさせてしまっていたに違いない。
 もしあの話は無しになんてことになれば、私の点数は一気に下がるはず。
 なんて不安は意味もなく、翌日もカルエゴ先生は準備室に来てくれていた。


 数日後。
 今日はいよいよテスト当日。
 今までの努力が報われる事を祈りながら、その日のテストを終えた。

 結果が返される来週までは、準備室での勉強はお休み。
 私は不安で一杯な気持ちを抱えてその日が来るのを待つしかない。
 ここ数日はいつも以上に勉強に集中したせいか、学校が終わって直ぐ帰宅というこの状況が落ち着かない。
 ベッドに横になってみてもテストの結果ばかりが気になる。
 先生二人に協力してもらったのに合格ラインに達してなかったら申し訳無さ過ぎる。

 でもその時は、準備室に通うのを辞める機会なのかもしれない。
 カルエゴ先生は、先生と生徒が長時間二人きりでなければ問題ないと言っていたけど、ここまでしてもらってダメなら、もうバラム先生に迷惑はかけられない。
 バラム先生との勉強を思い出し視界が歪む。
 何故私は泣いているんだろう。
 思い出せば思い出すほどに涙が溢れて自分の気持ちに気づく。



「私、楽しかったんだ……」



 今まで私は誰からも向き合ってもらえなかった。
 理解力の無さは勉強だけでなく悪魔関係にも影響して、周りは私と話す事自体避けた。

 そんな私の成績は一桁。
 理解力がないんだから当然と言える成績。
 聞ける人なんて居なかったから一人で頑張るしかなかったのに、ある時、同じクラスのイルマくんと初めて話した。
 彼は私の話をしっかりと聞いてくれて、尋ねれば真剣に答えてくれる。
 初めて私と向き合ってくれた悪魔。
 イルマくんとおトモダチというアスモデウスくんやクララちゃんとも次第に話すようになったが、理解力の無さにアスモデウスくんはいつも呆れていて、クララちゃんにも理解力の無さで直ぐに別の興味がある物に移り変わられてしまう。

 悪魔関係も勉強もダメで落ち込んでいた時、私と同じくらい勉強が苦手だったイルマくんが赤点を回避した。
 どうしていきなり点数が上がったのか尋ねて教えてもらったのがバラム先生だった。
 バラム先生といえば、生徒で実験をしていると噂され、怖がられている悪魔。



「危なくないかな」

「全然! バラム先生はとっても優しくて、勉強も凄く解りやすく教えてくれるよ」



 嬉しそうに話すイルマくんを見て、私は思い切ってバラム先生を訪ねた。
 扉をノックすると中から返事が聞こえ、ガラッと開かれた扉の向こうにはカルエゴ先生とはまた違った怖さを纏う悪魔の姿があり、私は悲鳴のような声が小さく口から出た。



「あれ? 初めましてだよね。珍しいな生徒のお客さんなんて。どうぞ入って。今魔茶を淹れるね」



 先生は中へと戻り魔茶を淹れ始める。
 私もここに立ったままというわけにもいかず恐る恐る中へと入れば「そこの椅子にどうぞ」と促され椅子に座る。

 魔茶を溢さないように慎重に淹れるバラム先生を見ていたら、何だか聞いていた噂と違い笑みが溢れた。



「どうかしたかな?」



 魔茶を淹れた湯呑みを手に私を見た先生が不思議そうに尋ねてきたので、私は思ったことを素直に伝えた。



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