†【the walking dead】†

□†【16】†
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昨日狩にグレンと出た時に
別れて森を歩いていたら
グレンの叫び声が聴こえた

森の中を
グレンの声を頼りに
ひたすら走り抜け

沼にはまり
身動きが出来なくなったグレンと
狙うように沼にはまっていた
ウォーカーを見つけ退治した

その時
少し先の方に
小さな小屋を俺は見た
その日はデカイ収穫があり
グレンは泥だらけで
またいけばいいと入らなかった

あんな森の奥にある
小さな小屋
周りも綺麗で荒らされた形跡がない
きっと非常食があるだろうと
リックと今日来ている

【………】
『………』

【…まさか
あんたまで沼のトラップに
嵌まるとはな】
『…まいったよ
まぁウォーカーの血よりマシだが』

【小屋に着替えも
あるんじゃねぇか?】
『ああ…』

小屋の中には
1体だけ動けないウォーカーがいた
この小屋の人間だろうか
作業着を着ていて
足元に銃が落ちていた
逃げていた道中に襲われたのか
傷は1ヶ所太股にあった

【…ショットガンが並んでる
猟師か?】
『…天体望遠鏡があるぞ
宇宙の…本とか』

【複数のショットガンは護身用か?
ロマンチックな優男の趣味小屋か
服は…無いな
まぁ他があるだけ助かるな】
『……ダリル』

【あ?】
『あの部屋は?』

リックが指を指す部屋を
二人で覗いて見ると
【…シャワールームだな】
『…だな』
意外と綺麗なシャワールームが

ただ
お湯は出ないよなと
苦笑いしながらリックが
ふざけて機械に触れると…

『!?』
【…何でだ?】

『…大陽エネルギー?
よくわからないが
お湯が出るうちにシャワー浴びないか?一緒に』
【今なんて?】

『一緒にシャワーを浴びようと
いつお湯が出なくなるわからないだろ』
【………】

『嫌か?
あ…人とシャワーを浴びてる姿
あまり見ないな』
【嫌じゃねぇけど】

『……そ?』
【アンタが先に中へ】

隠す必要なんて無いと
わかっている
堂々と見せられる事だとわかっている
こんな世界だ
親父から受けた虐待の傷痕なんて
サバイバル生活でついた傷痕くらいにしか
敏感な人間以外気づかないだろ


あの頃の様に
弱い俺じゃないし
ただ
無意識に隠してしまう

可哀想とか
思われるのが想像するだけで
腹が立つからか

『…♪
皆には悪いな
熱いシャワーを浴びたいだろうに』
【…だな】

泥にまみれた服を
次々にリックは脱いでいく
出会った頃よりも肉厚な
生っ白い肌が姿をあらわしイヤらしい
なんだ…たまってんのか?
見境ないな俺も

【………】
基本的に人間は好きじゃねぇけど
強い人間や魅力的な人間は
男女問わず好きだ
『♪♪』

リックが背をむけ
シャワーを浴び始め
俺も服を脱ぎ中へと入り
向き合うようにシャワーを一緒に浴びる

『ダリル未使用の石鹸もある
ローズの香りらしい♪』

久しぶりにリックは笑みを放つ
ローリーが死んでから
精神のバランスを崩し
リックは亡霊に悩んでいると
ハーシェルにこっそり聞いていた

眉間にシワを寄せた顔をして
森の中をフラフラと歩いたりと…

【…ああ
なんでローズ?】

そもそも
こんなにハシャグ姿を
見たことがあったか?

いや
こんな世界だ
仲間が次々に死んでいく世界だ
もしかしたら
俺が最初で最後かもしれないな

固形石鹸でリックは
器用に泡を作り
『この茶色は地毛か?』
【…さぁ】
俺の髪や身体につけていく

『さぁ…って
ほら洗えよダリル』

まるでカールにみたいな扱いに
少し情けない気持ちになるが

暖かいシャワーに泡まみれなんて
贅沢だと感じながら
自身を洗い出した

デカイ大人の男が
泡まみれで身体を洗い出し
ふざけてリックの顔に泡を投げて
リックもふざけて俺に
泡を投げ返し…

今までハシャイでいたリックが
ピタリと動きを止めた

【…リック?】

顔を覗きこむと
今にも泣きそうな瞳を
『わ…悪いな
思い出したんだ
ローリーとカールと三人で風呂に入って
泡を投げ合った事とか
…ッ…』
いや…泣き出した

【リック…鼻水出てるぜ】
『はは…止まらない
止めたい…のに』

強い人間だけど
たまにアンタは泣き虫だ
俺はそんなアンタを見習おうと
努力している

【止まる方法知ってるか?】
『知らない…知りたいな』

リックの涙を舌で掬い上げた
俺の行動に驚いたリックは
ビクッと身体を跳ねらせた

【くく…驚く事だ】
『あ…ああ
確かに…止まったよ』

【もう1回舐めてやろうか?】
『いや…いいよ////』ビク

泣きたいよな
わかるぜ
その感情は
俺だって止められないって事
でもアンタの涙は止められる

俺が出来る全で
アンタたちを守るから

泡を流し終えて
シャワーを止めようと…
【うわッ!!冷てッ!!】ビク
お湯は水にかわり
驚いた俺をリックが背後から支えて

『大丈夫か?』
【……冷えた】

『早く暖炉に…
きっと部屋は暖かいぞ♪』
【…♪】

俺の背中をアンタが支えるように
俺も誰よりも
アンタを支えたい

本当だ

【…なぁ】

『?』
本当だよ

アンタは俺が離れなければ
俺を置いて
何処へも行かないから

【タオルは?】
『………あ』

そうだろリック


下着を暖炉で乾かして
それを着たら
半裸で身体が乾くまで二人
暖炉の前に座りリックは服を乾かす

『…見張るから先に寝ろよ
俺は服を乾かしたい』
【ああ…】

パチパチと暖炉の中から火花が音を鳴らす
仰向けに寝転がり
窓から外を眺めるリックを見る…

なんの緊張も恐怖や不安も無い
睡魔が襲う
久しぶりの感覚

【…おやすみリック】

小さな声で呟くと
それを拾ったリックが
優しい声色で
ーおやすみダリルー
眠りの世界の中で聴こえた


夢を見た

餓鬼の頃に森で一人
遭難した夢

ダチと遊んで
周りがチャリで帰るなか
一人歩いて帰る夢

母親は酒浸り
家を燃やし死んだ夢

暴力の矛先の兄貴が消えて
父親は俺に暴力を
痛みに耐えている夢

こんな夢は珍しくねぇ

ただ最近
その夢につけたされる
続きがある

保安官の姿のリックが
遭難した俺を見つけ

一人歩いて帰る俺を
警察車に乗せて帰る

酒浸りの母親に
家から出され玄関で座る俺に
声をかけて中へといれてくれる

暴力をふるわれ
外へと逃げ出す俺を見つけ
もう大丈夫だと抱き締める

【……….。o○】
『おはよう…交代しよう』

俺は安心して
目覚めも気分がいい

リックが床に寝転がる
横向きに小さく身体を縮めて
胎児の様な姿で

【俺がいるから
…安心して眠れよ】
『…zzz』

リックの無精髭越しに頬に触れて
俺は窓際へと移動し
闇に包まれた外を見た
凄く静かだ

夜空には星が
たくさん光っている

『……ダリル』
【ん?】

『一緒に…寝ないか?』
【…そうだな】

たまには
こんな1日もいい

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