†【the walking dead】†

□†【1】†
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過去も現在も未来さえも
俺の中では世界は
変わらないと思っていた

もともと腐った世の中で
俺はただ息をしていただけだ

俺みたいな餓鬼なんて
たくさんいただろうと今ならわかるが

自分と言うモノが生まれた時から
毎日父親の暴力に耐えて
見ないふりを決め込む母親は
餓鬼の頃に火事で死んじまった

俺の拠り所は兄貴だけだった

兄貴はそれを勿論わかっていた
だから俺が近くにいることを
突き放したりはしなかった
まぁ…年少に入ってばかりで
結局独りの時間が多かったが

こんな腐った世の中が
更に腐っただけだと感じていた

更に腐った奴等を殺していく
サバイバルが何だ?
別にたいした事じゃねぇ
何の苦労も知らずに変化を迎え
狼狽える連中が目障りだった

食えるもんは食って
邪魔なら殺せばいい
生きるときは生きて
死ぬときは死ぬんだ
そんなもんだと


兄貴が俺の世界の中心だった
周りが兄貴をどんなに
酷く言い捨て態度で現しても
俺には兄貴しか居なかった
どんなに歪んでいる兄貴でも

兄貴がそうなった原因は身でわかってる



俺が狩りをしている間に
兄貴は市街地へ
キャンプの奴等と出ていた

そいつらが戻り
たくさん狩った
飯にする栗鼠を兄貴に見せようと
何処に居るんだと問いかければ

どっかの屋上に手錠をつけて
置いてきたと言いやがった
吐き気がした連中に怒りも
俺はまた他人を罵った
泣きながら罵った
そんな中で兄貴の変わりに着いてきた
初対面の男が

間抜けに置いてきた武器と
兄貴を救いに行くと

『…ダリル?』

コイツが初めて
兄貴以外の
俺の世界の住民の
腐った人間の印象を

変えたんだ

(…リック)

『何やってるんだ?
寝れる時に寝ないと
明日動けないぞ?』

(んなやわじゃねぇよ
…俺に構ってるアンタも
明日動けなくなっても
俺は助けねぇぞ?
アンタがいねぇと困るだろ嫁と息子が)

『くく…』

(??)

『ダリルは此処の人間を助けるよ
必ず…そのボーガンでね』

(!!
何でおまえにわかんだよ!)

『ん〜…
ダリルの目がそう言ってる
口より目が語るからな
出逢った頃のきみとは
だいぶ変わった』

凛と構えた姿勢に
真っ直ぐな強い視線
まるで…そうだな
アメコミのスーパーマンみてぇだな

正義と家族と
生存者の魂を背中に背負った男は
ー兄貴を手錠でつないで
屋上に置いてきただと!!
兄貴を助けにいくッ!!
‥ざけんなよッ!!クソ野郎共
なんてことしやがるッ!!ッ…
クソッ!!クソ野郎ッ!!ー
出だしから周りがビビル様な態度の俺に
ーダリル!落ち着け話し合いたい
一人で行くな
手錠をつけたのは俺だ
兄貴は必ず救いだすOK?ー
俺の前に立ちそう強く言葉を投げた

言葉なんて簡単だ
誰だって適当に言えるさ

だけどコイツは
ウォーカーが蟻の様に湧く市街地へ
死ぬ気で脱出したにも関わらず
兄貴を真っ先に救いに行った

言葉なんて簡単だ
誰だって適当に言えるさ

コイツは態度で俺に証明して見せた
その言葉は飾りじゃねぇんだと
最初から自分の命の重さよりも
家族や他人の命を重く捉える奴だった

(…メルル
どこいっちまったんだろ
俺を置いて…手だけ置いて)
『ダリル…
メルルの手…持って帰ったのか』

(ッ…喰われちまったかな?
クソ野郎どもに兄貴は)
『……ウォーカーは
犠牲者のなれ果てだ
生き延びる為に殺すが
それを忘れてはいけないダリル』

(………クソはクソだろ)
『それにメルルは生きているさ
俺が彼処へ2度行き
こうしてダリルと話している
違うか?』

(………だな
俺が生きてんのに
兄貴が生きてねぇのは変だ)
『……ダリル
きみには生きてほしい
だから一人での行動は控えてほしい
俺と一緒に乗り越えよう』

(ッ!!)
『わかるか?
きみはきみが思っているよりも
命は安くないってことだ』

(‥‥きも)
『!!』

(恥ずかしくないか?今…おまえ
んなしゃーしゃーと
歯が浮くような
台詞言うんじゃねぇよ…)
『‥そうか?
普通じゃないか?』

(普通じゃねぇよ!!)
『ああ〜…モノを蹴るな
大事にしろ』

(ちッ…アンタが言うと)
『??』

(期待しちまうから
やめてくれ…)
『…ダリル』

(寝る…おまえも寝ろよ)
『OK…おやすみダリル』

兄貴や俺が
生きていく中で
monsterに変わっちまった様に

(……お…おやすみ)

アンタは変わらないでくれ

monsterには…

『‥♪』

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