心霊探偵八雲短編集

□映画研究同好会
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「あ、そうだ!ねえねえ瑞季」


「ん?」



入学して数日後、私は仲良くなったばかりの有紀と食堂でお茶をしていた。



「2年生にさ、幽霊が見える人がいるって知ってた?」


「いや…」



知らない、それに幽霊が見える人なんてテレビでくらいしか見たことがない。

それにあれはどうせヤラセだとすら思ってる。



「その顔疑ってるでしょ。高校の先輩がここの2年生なんだけどね、先輩達の間ではかなり有名らしいよ」


「へえ」


「もう!もっと興味持ってよ!」


「ごめんごめん」


「それにね!」



有紀の目がキラキラしている。

な、なんだろう…



「その人すっごいかっこいいんだよ!」


「あ、そういうこと…」


有紀はそこに食いついているわけか。



「見たことあるの?」


「うん!まあちょっと頭がボサボサすぎるのはあれだけどねえ…」


「ボサボサ?」



ふと、あの時の彼が浮かぶ。
桜の木の下で出会った彼。
名前は…


「さいとう、やくも…」


「え?」


「え?あ、なんでもない」


「でね、B棟の裏手にプレハブの建物があるらしいんだけど、そこにいるんだって」


「B棟?って部活とかサークルが使ってるとこだよね?」


「そうそう。その人ね、映画研究同好会に入ってるらしいよ」


「そうなんだ」


一口紅茶をすする。



「でね、その人の名前…なんだったかなあ…よくある名字だった気がするんだけど…」



うーんと悩んでる有紀を見ながらもう一口紅茶をすする。



「あ、さいとう…だった気がする」


「えっ」


さいとう。


この大学内でボサボサの髪でさいとうなんてきっとあの人しかいない。


「あ、気になりだした〜?」


「べ、別に」


と言ってもう一口紅茶をすする。



「はあ、もう一回会いたいなあ」


「部室に行ってみればいいじゃん」


「それがさ、映画研究同好会って女の人と2人しかいないらしいよ。そこに行くのなんか気まずいじゃん」


2人…だけ?


なんだろう、このモヤモヤ。

一度しか会ったことない人に何を感じてるんだろう。


「しかも美人さん」


はあ…とため息をつきながら有紀がテーブルに突っ伏す。


「なんでそんなに気になるの?」
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