CP1

□少し未来の話
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「私、君島育斗に似てるって言われるんです」
「…………ええぇ?!」
思わずまじまじと顔をガン見してしまったわたしを意に介した様子もなく、木手くんは手の中の缶コーヒーを顔の横にかざしてみせる。
「君の唇にも届け潤い」
「ただの木手くんだよね?!少しは寄せようよ!しかもそれ大分懐かしいやつ!」
「いけませんか?」
「いけなくはないけど……」
そう、何もいけなくはない。ただ似てると言っておいてまったく似てないのが見過ごせない問題だった。
そう言うと、木手くんは私が言い出したことじゃありませんよ、と首を振った。
「だって、キミ様でしょう?」
木手くんがキミ様に似てるなら、そもそも似ているとはどういうことか、そこから考えないといけない。
キミ様ねぇ。
木手くんに似てると言われて、いつかのドラマでみた役柄を思い出していた。
オールバックで高そうで派手なスーツを着て怖い笑顔を浮かべていたキミ様。
子役時代やCMで見慣れた姿とは一転したイメージが鮮烈で、ドラマの内容は忘れたけど、これがあのキミ様なの?とお母さんと言い合ったことは覚えている。
ああいう役なら木手くんの雰囲気とも近いかもしれないけど、そんなこといったら威圧感を醸し出してる眼鏡の人ならみんな似てるといってしまえるんじゃないだろうか。
「誰が言ったの?何をもってそんなこと」
「さぁ……何を考えてるんだか」
どちらの問いにも、木手くんは肩をすくめただけだった。

2017/12/29



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