CP1

□断片
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「怪我でリタイアなんて残念ですね」
 前の座席に座る遠野の肩に手を置いた。口にした言葉は心とは裏腹で、自分の心境を表すのにまったく適切ではなかった。
 そこにいればいい。卑劣極まりないテニスをするアナタにコートは相応しくない。そのまま壊れた足を引きずっていればいい。
 思い浮かべた言葉もまた適切ではなかった。言語で思考を捉えられない。
 遠野は君島を見上げた。珍しいものを見るような顔だった。
 揺るぎなかった遠野への感情が揺らいでいた。勝利したのは自分だと、シャッフルマッチの決着の瞬間に感じたものはもうなかった。
 遠野の瞳に映る自分の表情から思わず目を逸らして、遠野が何か言うより早く座席についた。

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