性活愁感

□真希とおじいちゃん
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【真希とおじいちゃん】

真希ちゃんは、二ヶ月前に准
一さんと結婚したばかりでし
た。看護学校を卒業してすぐ
にです。
しかも看護師資格がありなが
ら、看護師にはならずに専業
主婦となったのです。

それなのに准一さんは、一ヶ
月前から三ヶ月の予定で出張
を命じられてしまったの…

三ヶ月という短期の出張のた
め、准一さんの単身赴任でし
た。
甘い新婚生活は、僅か一ヶ月
で引き裂かれた格好でした。

(准一さん…)

寂しかったのね…真希ちゃん
は募る思いに耐えられず、寝
室で自慰に耽(ふけ)っていま
した。

『ふおっ、ふおっ、真っ昼間
からオナニーに耽るとは淫乱
な嫁っ子ぢゃ…ちょいとお仕
置きせにゃならんかの…』

不敵な笑みを浮かべる幸蔵じ
いさんは、パソコンの画面に
写し出されているリアルな真
希ちゃんのオナニーシーンを
見ていました。

その日の午後、幸蔵じいさん
と忠志じいさんは将棋を指し
ていました。

「お茶が入りましたよ」

真希ちゃんは、将棋盤の脇に
湯呑みとお煎餅を置いて将棋
盤を覗き込んでいました。

日課といえば日課ですが、寝
室に閉じ籠りきりというわけ
にもいきませんからね。
他にも幸蔵じいさんの散歩の
お相手をする事もあります。

『ありがと、真希ちゃん。
おい、下手な考えなんとやら
ぢゃ!せっかくぢゃから、お
茶を戴こうかの』

『そうじゃな、せっかくだか
らご馳走になるか…ありがと
よ真希ちゃん、戴きますよ、
旨いのお』

幸蔵じいさんと忠志じいさん
は、将棋を指す手を止めて真
希ちゃんの煎れてくれたお茶
をすすり、お煎餅を割って頬
張っていました。

ほのぼのとした時間が、三人
を包んでいました。

『しかし、お前さんは幸せも
んじゃな、孫の嫁っ子の顔ま
で見られるとはの…』

『そうぢゃのお、孫の顔を見
られれば御の字ぢゃと思うて
おったが可愛い嫁っ子の顔ま
で拝めたんぢゃからのぉ…婆
さんにいい冥土の土産話がで
きたわい』

『何を言っとるじゃ、ここま
で来たらひ孫の顔も拝んで行
かんかい』

「そうですよおじいちゃん、
まだまだ長生きしてしてくだ
さい…」

『ほらな、真希ちゃんもそう
言っとるんじゃ、長生きせに
ゃならんぞ』

幸蔵じいさんと忠志じいさん
は、真希ちゃんの笑顔に癒さ
れながら将棋を指していまし
た。
宿敵同士の間柄も、暫しの休
息でした。

『そうぢゃ…』

幸蔵じいさんが湯呑みをひと
つ持ってきて、三人で長寿を
願ってお茶で乾杯しました。

「ねえ、これってなんて云う
の?」

将棋を知らない真希ちゃんが
将棋盤を指差して聞いてきま
した。
忠志じいさんの将棋談義が始
まってしまいました…

しばらく、忠志じいさんの話
を頷きながら聞いていた真希
ちゃんでしたが、いつの間に
か将棋盤の脇でうたた寝をし
てしまいました。

幸蔵じいさんは、奥から毛布
を持ってきて真希ちゃんに掛
けてやって、勝負を再開して
いました。

70手前まで働いてきた幸蔵じ
いさんでしたが、今は息子夫
婦と孫夫婦に囲まれて幸せな
老後を送っています。

奥さんの和子さんを五年ほど
前に亡くされていました。
忠志じいさんも同じ頃奥さん
を亡くされていて、子供達と
は疎遠になっていました。


続く
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